第85話 バイキング
バイキングというアトラクションをご存知だろうか?船のような形の乗り物で、それがブランコのように徐々に高くなっていくアトラクションなのだが、これは大きくなればなるほど怖いと感じる人が多いだろう。
ジェットコースターの方が怖い人もいるだろうが、例えば後ろに落ちる感じはなかなか背筋がゾクッとするものだ。俺は割と絶叫系のアトラクションは苦手ではない。かといって、好きでもないが。
ちなみに、うちの両親はこの手の絶叫系のアトラクションが大好きらしい。前に来た時もそればっかり乗ってた。もう少し大人しいアトラクションでもいいと思うのだが、遊園地といえば絶叫系と言っても過言ではないのだろう。
大人しいアトラクションだと子供向けのものが多いというのも要因の1つなのかもしれないが。
さて、そんな訳でウチの家族はそういう絶叫系が大丈夫な人が多かったのだが……ただ1人、可愛らしい反応をしている子がいる。
「はぅ……高ぃ……」
「ふぁぁ!落ちてるよぅ、あっくん……」
バイキングが動く度に隣で反応する可愛い俺の彼女。ぎゅっと俺の手を強く握っており、その健気さがまた俺を琥珀の魅力にどっぷり浸からせているのだが、本人は知る由もなく可愛い反応で俺を和ませていた。
バイキングに乗ってる人達は何故か皆、似たような感じで楽しげに手を上げたりして楽しんでる中で、こんな反応をする俺の彼女はやはり可愛い。
例えば、他の人がこんな反応をすれば俺はただのあざとい奴としか思わないだろうが、琥珀は素でこれだからこそ、魔性の女の子なのだろう。
「琥珀、目を瞑ると余計怖いかもよ?」
「うぅ……でもぉ……」
確かに目を瞑れば視覚的には安心かもだが、突然の浮遊感とかが更に怖くなるだろう。俺としてはこうして可愛い反応をしてる琥珀を見てるのは楽しくてずっと見ていたいものだが、可愛い彼女の好感度を少しでもあげておかないとね。
「手を握っててあげるから、大丈夫だよ」
「うん……離さないでね、あっくん」
「もちろん」
それにしても、怖がる彼女を見てて若干微笑ましく思う俺は意外とSなのだろうか?別に琥珀を痛めつけたりとかはしたくないけど、こんな可愛い反応をされると色々我慢でなくなりそうだ。
バイキングのアトラクション自体は多分2分もかかってないはずだが、琥珀的にはかなり長く感じたはずだ。俺はその間彼女の方しか見てなくてアトラクションの趣旨を完全に忘れていたが……仕方ない。これも、琥珀が可愛いからいけないんだ。
結論、何をしてても琥珀は可愛い (キリッ)
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