第2話 再会と決意
俺、
琥珀は内気な性格で、あんまり社交性はないがとにかく純粋な女の子だった。そんな彼女に俺は密かに想いを寄せていたのだと思う。
ただ、年頃のくだらないプライドというか、あんまり女子と仲良くすると冷やかす連中がいるせいか、小学校高学年から徐々に疎遠になり、中学に入ってからはほとんど会うことはなかった。
今にして思えばそんなくだらないプライドなんて捨てれば良かったんだ。他人になんと言われようと彼女のことをちゃんと見るべきだと。
それは確か中学3年生で進路を決める頃だったと思う。たまたま出掛ける時にタイミングが合い久しぶりに会った彼女は随分とやつれているように思えた。
『ねぇ、あっくん。あっくんは私が死んだらどうする?』
いきなりの質問に俺は困惑した。でも、この時にも彼女を救えるチャンスはあったように思える。なのに俺はそれを冗談だと思って笑って流してしまったのだ。本当に自分に腹が立つ。
そして翌日……彼女は学校の屋上から飛び降り自殺してこの世を去った。
失って初めてわかったよ。俺は琥珀のことが本当は好きだったんだって。でもその後で湧いてきたのはどうしようもない怒りだった。彼女をいじめた連中への怒り、彼女に暴力を振るい追い詰めた親への怒り、そして何よりそれらを知らずにのうのうと生きてきた自分への怒りで俺はどうしようもなくなりそうになった。
何度奴らに復讐して、そして自分もその罪を背負って死のうかと考えた。でも、それも結局俺の勝手なエゴで、彼女には何の関係もないとわかって抑えた。
だから俺は……今度は失敗したくないのだ。
こうして中学生に戻れたのも何かの縁。貰ったチャンスを絶対に生かしてみせる。絶対に彼女を……琥珀を守ってみせると誓って俺は隣の家のインターホンを押した。
『……はい』
「琥珀。俺だよ」
『……あっくん?』
「ああ、開けてくれるか?」
プツンと切ってから、ガチャっと扉を開けて出てきた彼女。間違いなく俺が知ってる幼馴染の桐生琥珀だ。まだ真新しい制服に身を包んだ清楚な女の子。俺の初恋の人にして……絶対に守りたい人だ。
「あっくん、どうかしたの?」
「え?」
「その……なんか、あっくんが凄く悲しそうな顔してるような気がして……なにかあったの?」
久しぶりに会って最初の台詞がそれかよ……本当にどこまでもお前は優しいんだなと思ってから俺は琥珀に抱きついていた。
「あ……あっくん……?」
「好きだ琥珀」
「ふぇ!?」
顔を真っ赤にする彼女。可愛い反応をする彼女に俺は真剣な表情で言った。
「俺は琥珀のことが女の子として大好きだ。だから……例え何があってもお前の味方だ。俺は絶対にお前を守ってみせる。だから……俺の彼女になってくれ」
その言葉に何かを感じたわけではないだろうが、驚いたような表情から更に顔を真っ赤にして彼女はこくりと頷くと言った。
「わ、私も……あっくんが好きだよ」
「……!?琥珀……!」
「わぷ……あっくん、苦しい……」
やっとだ。やっと想いを伝えられた。だからこそ俺は今度こそ絶対に琥珀を守ってみせる。例えどんなことがあっても何があっても大好きな幼馴染を守ってみせると心に誓って俺は琥珀と恋人になるのだった。
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