第3話:権力闘争・聖女ローゼマリー視点
思っていた通り、教会の権力者達は私を狙ってきました。
特に教皇派は、ボスを殺されたと思って直ぐに襲いかかってきました。
流石に王侯貴族がいる間は大人しかったですが、大混乱の会場から安全確保という名目で王侯貴族を追い出してから、直ぐに剣を持って襲ってきました。
曲がりなりにも神に仕える者が、剣をふるって聖女に襲いかかったのです。
どれほど教会が腐敗しているのか分かるというものです。
「ライラ枢機卿を呼んできてください」
私は側仕えの修道女に声をかけました。
血で血を洗う教会内の権力闘争はまだ終わっておらず、護衛を兼ねた側仕えに四六時中護ってもらわなければいけません。
前教皇派の襲撃は、まだ神様が下界を見ている間に行われたようで、全員が教皇と同じように雷撃を受けて丸焼きになりました。
思い出してしまうと、今でもまだ人間が焼ける臭いが鼻の奥に蘇ります。
思わずさっき食べた物が胃から逆流しそうになります。
「お呼びでございますか、聖女教皇代理猊下」
嫌味なのか本当に敬意を表してくれているのか、敬称をごてごてとつけた呼称を口にして、ライラ枢機卿が入ってきました。
前教皇が天罰を受けてからひと月、いっこうに次の教皇が決まりません。
決まらないどころか、投票にまで至らないという体たらくです。
まあ、あの天罰の嵐を見れば、誰だって神の実在を信じ怖くなります。
だからといって権力を手放す決意もできないのですから、人間とは欲深いです。
「急に呼び出してすみませんね、ライラ枢機卿。
実はあなたを見込んでお願いがあるのですが、聞いてくれますか?」
私の言葉を聞いて、全く表情が読めなかったライラ枢機卿の表情が、ほんのわずかにですが怯えを浮かべました。
そんなに私が怖いのでしょうか?
ああ、あの噂を耳にして、真実の可能性もあると警戒しているのですね。
神様の天罰が下る前に、私が修道女に天罰の確認をした事。
あの私にとって不用意だった言葉が、今では私が自由自在に天罰を下せるという、都合のいい推測に育っています。
「何事でございますか、私のできる事ならやらせていただきますが、なにぶん女の身で枢機卿をやらせていただいておりますので、大した権力がありません」
随分と謙遜するモノです、圧倒的に不利な女性の身で枢機卿の座にいるのです。
ライラ枢機卿の実力は同じ枢機卿の中でも有数でしょう。
ですが、それでも、限界があるのも確かです。
教会で一番勢力があったのは前教皇がボスだった一派です。
次に勢力を持っていたのはフレディ枢機卿がボスの一派でした。
ライラ枢機卿の派閥は三番目か四番目でしょう。
私を担いで教会を支配するには力不足ですから、私に支援を頼まれるのが怖いのでしょうが、同時に私が本当に天罰が下せるのなら、一番に味方したいと思ってもいるはずです。
その迷いを利用させてもらいますよ、ライラ枢機卿。
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