離婚してもいいですか?
あかりんりん
離婚しても良いですか?
今日は7月7日、そう、七夕である。
それと同時に僕たち夫婦の結婚記念日でもある。
そうか、なんだかんだ言いながら12回目の結婚記念日となるのか。
そんなことをふと思いながら子供の朝ごはんを用意していると、テーブルに置いてあった本に気がつく。
本のタイトルは「離婚しても良いですか?」
特にすることも無いので何気なく読んでみると15分程度で読み切れて内容も面白い。
さて、なぜこの本が置いてあったのか?
そういえば8時を過ぎても妻は寝室から降りてこない。
まさかこれは妻からの離婚をするぞという覚悟なのでは?急に不安がよぎる。
そういえば本の登場人物が「モラハラ夫」と「いつもニコニコして感情を我慢している妻」で、妻が離婚を目標にして働き始めるストーリーだ。
特徴が私と妻に似ているではないか。
今まで気がついていない人も多いだろうが私は友人から「ノンモラルマン」とも呼ばれた事がある程にモラルに欠けている。
だが、それほどモラルが大事なのであれば学校で教えるべきだろう。
だいたい、モラルなんてものは人によって違う。
そんな人によって正解の無いことに対して、正解を教えることなど不可能なのではないだろうか。
さて、すぐ話が脱線してしまうのは僕の悪いクセだ。
あるいは、良い個性かもしれないが。
話を戻そう。
たまたまその本が置いてあっただけかもしれないが、妻が離婚話を切り出したと想定して、親権は譲りたくないが、妻の浮気など無い限り勝率はゼロだろう。
「妻の浮気か・・・。」
気が付けば私はいつも人助けをしてお金に困っている友人に電話していた。
その友人は幼稚園からの幼馴染で、今でも付き合いがあり、先日も2人で深夜遅くまでお酒を飲んで語り合った。
彼は一度結婚したが、子供に恵まれず、もう10年以上も前に妻から離婚を要求されていた。
「あなたといると、私が悪者になっていくのが分かる。あなたは優し過ぎるから」
それが離婚の理由だそうだ。
友人は離婚したくは無かったが、やはり優し過ぎる性格で、反対することもしなかった。
そんな彼に僕は電話した。
「やぁ。こないだはどうもありがとう。また近くに是非遊びに来て欲しいんだけど。」
以前から彼は僕の妻のことを好いていた。
僕が妻に対する愛は無いとしても、やはりどこの誰とも知らない人に妻を任せるのは気が引ける。
彼が妻と一緒になってくれたら僕も安心できる。
それから毎週のように彼を我が家に招待し、いつも僕は眠くなっただの酔い過ぎたなどの言い訳をし、1人で先に部屋に戻り、2人の時間を提供し続けた。
そして毎週欠かさずに彼は来てくれて3ヶ月が過ぎ、僕は1週間の出張で家を離れることになった。
だが、それはウソだった。
僕は原付バイクで15分程度の駅前のホテルに寝泊まりしていた。
あらかじめ近所の別の友人にお金を渡していて、彼が我が家に来て、夜になっても帰らなければ連絡して欲しい旨を伝えていた。
近所の友人からの報告によれば、彼は毎日我が家に来ていたようだが、0時を過ぎる前には帰宅していた。
だが、僕のウソの出張から6日目の土曜日の夜、とうとう1時を過ぎ、2時を過ぎても彼は家から帰宅していないことを電話で聞くと、僕は駅前のホテルから原付バイクを走らせた。
家に着くとリビングの電気は消され、寝室には薄暗い灯りが付いているのが分かった。
僕は家のカギを静かに開け、電気をつけずにすり足で寝室へ向かった。
そして寝室の扉を少し開け、真実を見た。
2つの肉の塊が重なり合っていた。
2人の息遣いは荒く、僕は今まで聞いた事の無い喘ぎをしている妻の姿を見た。
僕は寝室で真実を見て、僕のペニスはとても固く勃起していた。
そして寝室の扉を完全に開け、その2つの肉の塊に付いているキラリと光る4つの目が、同時に僕を見た。
妻は慌てて布団で体を隠し、友人は「ゴメン。」とだけ言った。
「そっか。」
僕は無表情でそう答えた。
その後、家庭裁判所にはお世話にならず、示談で子供の親権は僕が手に入れることができた。
私の完全勝利に終わり、数日して妻が自分の荷物を整理している時に
「そう言えばあの本は?なんだっけ?離婚しても良いですか?だっけ?」
と僕は聞いてみたが、妻は
「何その本、そんなの知らない。」
とだけ言って家のカギを置き、荷物を持ってさっさと出て行った。
今日から私と子供の生活が始まる。
元気を出さなくては。
そうして一年経ち、再び7月7日の七夕を迎えた。
本来であれば13回目の結婚記念日だっただろう。
そもそも、どうしてこうなってしまったのだろう?
そうか、去年の結婚記念日の日に見つけたあの本を見つけた時からか。
「離婚しても良いですか?」
あの本はあれから一度も見つかっていない。
今日は七夕か。
そういえば、七夕のこんな話を聞いたことがある。
織姫と彦星は仲が良すぎて仕事を怠けるようになったため、天の神様が怒って2人を年に1度だけ会うことを許した。
その後2人は真面目に働き始めたが、年に1度しか会えない相手の潔白を疑うようになった。
そして2人は相手に気付かれないように式神を使って相手を監視することにした。
「相手が潔白でありますように」と願いを込めて。
それが「短冊」の由来である。
もしかしたら、去年の7月7日に神様があの本を僕の家に置く事で、神様が私達夫婦の絆を試したのだろうか?
そして私は、妻を疑ってしまった。
もしもあの日、妻を信じることが出来ていたら
もしもあの日、素直に過去の事を謝っていたら
もしもあの日、反省して生まれ変わると誓っていたら
「後悔先に立たず」とはよく言ったものだ。
次の7月7日にはあなた達の夫婦の絆を試されるかもしれない。
どうか、僕のようにならないで欲しい。
それが僕の、七夕への願いだ。
離婚してもいいですか? あかりんりん @akarin9080
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