第二部「monochrone (2002)」イントロダクション

モノクローン【monochrone】


1982年より日本国は、モノクローン法と呼ばれる新法により「ふたりっこ政策」を実施。

1982年4月2日の施行以降の新生児は、クローン技術により戸籍上の一卵性双生児として出生することが義務付けられた。

産道を通り出生した新生児をオリジン、その複製体をモノクローンと呼ぶ。

一卵性双生児はジェリービーンズと呼ばれ、モノクローンは作られず、特権階級が与えられる。

なお、母性を否定するかのように帝王切開によって出生した新生児、あるいはコインロッカーを母体とするコインロッカーベイビーズはどちらにも含まれず、彼女たちはミッシングと呼ばれる。

ジェリービーンズ>オリジン>ミッシング>モノクローンの順に階級が存在し、ミッシングからは人権が、モノクローンからは人権と頭脳が奪われる。モノクローンの脳は用途にあわせて人工脳が植え付けられる。また胸部にCH-××××××××(×は数字)という個体番号が焼かれる。

余談だが、1982年当時、この政策によって同和問題が解決するだろう、という日本政府の発表があったが、机上の空論であったことは言うまでもない。




主な登場人物紹介



被験者名小島夜子(やこ)

階級モノクローン

個体番号CH-39592021

年齢16歳と8ヶ月

生年月日1985年12月6日

血液型0型

身長156センチメートル

体重40キログラム

胸囲75センチメートル

視力右0.2

左0.3




記録者名小島雪(ゆき)

階級オリジン

国民総背番号OR-39592021

以下同上。

戸籍上、小島夜子は雪の姉である。


2002年7月19日より同年8月31日まで観察




モノクローンの食事も様々である。

オリジンとの格差を示すため、「モノクローンフード」と呼ばれる流動食が推奨されているものの、

そうでない(オリジンと同等の)食事の家庭も多い。小島家はその一例である。

写真は外国製のお菓子。夜子の大好物。


※ 写真は現在公開されていません。




加藤麻衣

雪のクラスメート。去年誘拐された。誘拐事件は未解決。15歳


加藤イリコ

麻衣のモノクローン。日本軍モノクローン部隊に徴兵され、アフガニスタンの最前線にいたことも。15歳


鈴木芹菓

雪のクラスメート。16歳


鈴木カヨ

芹菓のモノクローン。16歳


加藤 学

麻衣・イリコの兄。ひきこもり。21歳。


鈴木慎吾

芹菓・カヨの兄。20歳


宮沢 渉

雪・夜子のおさななじみ。フィギュア造型師。専門学校生。17歳


小島経夫

雪・夜子の父。32歳


小島綾音

雪・夜子の母。夫とは別居。行方不明。夜子とはメールを交換している。30歳


キンジ先生

内閣総理大臣。政治家である雪・夜子の祖父の秘書をしていた関係で雪・夜子のおじのような存在。43歳


佐野友陽

夜子とメール交換する。サブカルチャーの造詣が深い。年齢素性本名等一切不明


棗 弘幸

神戸市立緑南高校生物教師。麻衣を誘拐した全国指名手配中の誘拐犯と同姓同名。29歳



この観察日記を以上の人たちに捧げます。

                     2002年8月某日 小島雪

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