第325話 悪魔の囁き
真奈美とデートの約束をした……からといって、全てが解決したというわけではなかった。
結局、真奈美はその後もちょくちょく遅刻してきた。その理由は……結局、わからなかった。
ただ、俺自身が、真奈美が中原と喋っている光景というのを、俺は見たことがなかった。
外川が見せてきたあの画像……あれは、たまたま、偶然の光景だったのではないだろうか?
それに、中原と真奈美が喋っているくらいでそこまで気にする必要なんてないじゃないか。自分でも段々そう思うことができるようになってきた。
そして、少しずつ、真奈美と水族館に行く約束をした日が近付いてきていた。
「前野さんと、デートするんだって?」
その日、昼休みに、たまたま真奈美が教室にない時に、外川が俺に話しかけてきた。
俺は最初、無視しようかと思ったが、付き合ってやることにした。
「……お前に関係ないだろ」
「フフッ。まぁまぁ。別にデートが悪いなんて言ってないよ~? むしろ、いい事じゃない?」
相変わらずのヘラヘラした態度で、外川はそう言う。
「……で、お前が俺に話しかけてきたってことは、何か嫌な思いを俺にさせたいんだろ?」
「えぇ~? なにそれ? 酷くない? 別に僕は後田君に嫌な思いをしてもらいたくて話しかけているわけじゃないよ~?」
わざとらしくそういう外川。俺はいい加減面倒だったと思い始めていた。
「……じゃあ、用事はないんだな? 話は終わりだな」
「あれが、偶然撮影されたものだったと思ってない?」
と、外川は急にそんなことを言ってきた。嫌な予感がする。
「……何が、だ?」
俺が食いついてきたとわかったのか、外川はニヤリと微笑む。
「あの画像。中原君と前野さんが話していた画像、ね」
「……あれが、偶然撮れたものじゃないって言いたいのか?」
自分でもそれ以上聞いてはいけないというのに、俺は聞いてしまった。
外川は勝ち誇ったように笑みを浮かべている。
「そういえば、前野さん、どこ行っちゃったんのかなぁ?」
「……知らない。別に……たまたま、どこかに……」
「僕、前野さんと中原さんがどこにいるか、知っているよ?」
耳元でそうささやく外川の声は、完全に悪魔の囁きそのものだった。
俺は……そう分かっていたというのに、そのさきを聞かずにはいられなかった。
「……真奈美は……どこにいるんだ?」
「フフッ。じゃあ、案内するよ」
外川は嬉しそうな顔で教室から出ていく。
俺はまるで操られるように、外川のあとをついていってしまったのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます