第326話 見たくない、聞きたくない
俺は外川に言われるままに、その後をまたしてもついていってしまう。
この進み具合からすると……前に俺と外川が行った教室じゃないだろうか?
「……お前、この前行った教室に行こうとしているんか?」
俺がそう聞くと、外川は振り返る。
「あの教室、最初に見つけたのは実は、僕じゃないんだ」
「……は? なんだそれ」
「あの教室を使っている人たちがいたってこと。意味、わかるよね?」
そう言われて俺は脳が理解をしていく。いや、正確には理解したくなかったが……段々とわかってきてしまった。
そして、俺は気づくと、階段を駆け上がっていた。そして、以前、外川と訪れた使われていないはずの教室の前に立つ。
「え、えっと……これでいいのか?」
……聞こえてきたのは、中原の声だった。
「うん。それでいいよ」
……認めたくなかったが、同時に聞こえてきたのは、間違いなく、真奈美の声だった。
嘘だ。違う。真奈美じゃない。似ている誰か別の声だ。
俺は自分に言い聞かせる。しかし、どう聞いても今の声は……。
「いや、でも、これ……中々難しいぞ?」
「そうかな? ほら。ここをこうやって……痛っ!」
「ちょ……前野、お前、大丈夫か?」
「ううん。大丈夫。平気だよ」
……なんで、そんな仲良さそうに話している。そもそも、中原は一体どういうつもりなんだ? お前には横山がいるはずだろう? なんで真奈美と仲良くする必要があるんだ?
頭が混乱していく。俺は立っているのも段々と辛くなってきた。
「……しかし、こんな所は、愛留には見せられないな」
「フフッ。私も。湊君には見せられないなぁ」
……なんで、俺に見せられないんだ? 何をしているんだ?
俺は扉に手をかけようとする。しかし……力が入らなかった。
もし、扉を開けて最悪の光景を見てしまったら、俺は――
「裏切っているんだよ。君のことを」
耳元で、悪魔が囁く。
否定しても……なぜかその否定はまるで心に響かなかった。
「隠れて君のことを馬鹿にしていたんだ。ずっと、ね」
「……違う。真奈美は、そんな……」
「じゃあ、扉、開けてみる?」
そう言って、外川が扉に手をかける。俺は……耐えきれなかった。
そのまま廊下を走っていく。背後から扉が開くような音が聞こえたが……振り返らなかった。
俺は……裏切られた。
走りながら階段を降り、わけもわからず校舎を飛び出したその時、明確にそう思いこんでしまったのだった。
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