第269話 掴みどころのないヤツ

 授業中、俺は思わず端井の前の席の外川を見てしまっていた。


 といっても……当の外川は机に突っ伏して眠っている。


 ……そうだ。基本的に外川はいつも眠っている。誰かと話しているのも聞いたことがない。


 しかし……なんで、俺達のグループに入ると言ってきたのだろう?


 それがどうにも気になってしまって、自然と外川のことを見てしまっていたのだった。


「おい! 外川!」


 と、そんな折、授業中の先生が外川の名前を呼ぶ。


「ん~? はい~?」


「お前、寝るな!」


 先生にド直球で怒られているが……相変わらず外川はヘラヘラしている。


 どうにも掴みどころのないヤツであることはわかるが……それ以外はまるでわからない。


 と、いきなり外川がこちらに振り返ってきた。俺は丁度その時、外川の方を見てしまっていた。


 外川はニヤリと笑って、俺にウィンクした。俺は即座に目を反らす。


 なんなんだ、アイツは……意味がわからない。


 結局、俺は外川のことを観察していたが、何もわからなかった。


 そして、放課後。


「ねぇ~、後田君」


 と、外川が俺に話しかけてきた。瞬間、前野と端井の視線を感じる。


「……なんだ?」


「今日さぁ~、一緒に帰ろうよ~」


 ……掴みどころのないヤツが、またしても突拍子もないことを言ってきたのだった。

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