第242話 途方

 その後、俺と横山がファミレスから丁度その時だった。


「……あ」


 俺は思わず声をあげてしまった。近くの電信柱の影に……人影があった。


 あれは……どう見ても端井だった気がする。いや、こんなことをしているのは端井しか考えられない。


 今日は帰れないと言ったはずなのだが……どうしたのだろうか?


「何? どうしたの?」


 当然、横山が不審がって俺に聞いてくる。


「……いや、なんでもない。ホントに、なんでもない」


 俺は強調するように横山にそう言う。横山は不審そうに見ているが……しばらくすると「ふーん」と興味なさそうに顔を反らした。


「とにかく! 学園祭まで時間ないんだから、どうするかはっきり考えておくべきだと思うよ」


「……あぁ。わかったよ」


 と、俺がそう言うと横山はジト目で俺のことを見る。


「……ホントにわかっている?」


「……わかっている」


「もし、告白しなかったら、ヘタレ君って呼ばれるようになることも?」


「……わかっているって」


 俺も当然そのことはわかっていた。横山はそれでも不審そうに俺のことを見ていたが……やがて納得してくれたようで、一人で小さく頷いた。


「わかった。じゃあ、後田君のこと、信じるから」


 そう言って横山は俺に背を向けて歩き出す。と、そのまま背中が小さくなっていくかと思いきや、振り返っていきなりこちらに戻ってくる。


「そこらへんで、ちょろちょろ動き回っているヤツにも、はっきりさせなよ」


 そう言って今度こそ横山は去っていってしまった。どうやら、端井のこと、横山も気付いていたらしい。


「……どうしてこんなことになったんだ?」


 俺はただ、オレンジ色になりかかっている空を見上げて、途方に暮れながら、思わずそう呟いてしまったのだった。

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