第238話 整理

 学校を出てから、俺と横山は並んで歩いた。横山は付き合ってくれてと言ったのに、黙ったままである。


 ここは俺の方から切り出さないと……そう思って俺は横山に話しかけようとした。


「……あのさ」


 と、そう思った矢先に、横山が口を開いた。そして、俺の方に顔を向ける。


「……何?」


「その……真奈美とは、どうなの?」


 真奈美……前野のことと認識するまで少し時間がかかってしまった。


「……どうなの、って?」


「いや、だから……上手く行っているのかなぁ、って……」


「……上手く行っているって……いや、別にいつも通りだけど」


 と、俺がそう言うと、横山は目を丸くする。


「へ? ちょ、ちょっと待って……後田君、真奈美と……付き合っているんだよね?」


「……は?」


 いきなり飛び出てきた言葉に、俺はあまりにも驚いてしまった。


 俺と前野が付き合っている? どうしてそんな話になるんだ?


 いや、まぁ、前野のことは嫌いではないが……そもそも、付き合おうなんて言った覚えはないし……。


 と、横山はしばらく驚いていた顔をしていたが、段々と不満そうな顔で俺を見る。


「え……何? マジで言っているの?」


「……マジも何も……付き合ってはいないが」


 俺がそう言うと横山はなぜかいきなり、道の真ん中だというのに、しゃがみこんでしまった。


「……お、おい。大丈夫か?」


「……ごめん。ちょっと気持ちを整理するから、待って」


 そして、しばらくの間横山はしゃがんでいた。幸い周囲に人はいなかったが、俺はなんだかいたたまれない気分になった。


 と、横山はゆっくりと立ち上がった。


「うん……整理できた」


「……そうか。それなら、良かった」


「……良くない」


 そう言って横山は俺のことを睨む。その鋭い目つきに俺は思わず気圧されてしまう。


「後田君、今どうなっているのか、詳しく教えてほしいんだけど」


「……ど、どうなっているって……何が?」


「真奈美との状況! あと、ちょっかい出してる端井のことも!」


 横山の勢いに俺は完全に押されてしまっていた。


 横山が元気になったのはいいが……なんでこんな展開になったのだろうか?

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