第193話 行事
「二学期は色々な行事がありますけど、皆さんもあんまり浮かれないで、自覚を持って行動してください」
先生がそんなことを言っているが……自覚ってなんだろうか? いまいちわからない。
というか、二学期は行事が多いのか。確かに言われてみれば学園祭や修学旅行なんかも二学期に行われる。
一学期以上に色々なことがあって大変そうだなぁ……となんとなく思ってしまった。
ふと、俺は前の席の前野の髪の毛を見つめてしまう。相変わらず艷やかで美しかった。
……ではなくて、未だに俺の中に引っかかっている、前野が夏祭りで言おうとした言葉……あの続きをどこかで聞かなくてはいけない。それがどこかの行事になるのか、あるいは……。
と、そんなことを考えていると、前野がいきなり振り返った。
「楽しみだね」
小声でそう言って、すぐに前野は俺に背中を向ける。楽しみ……確かに楽しみではある。
しかし、同時に俺はこれから前野との関係はどのようになっていくのだろうか……それは俺自身の選択によって変わってくるのだろうけど。
そんなことを考えていると、午前中の授業が終わってしまった。昼休みになる。
「後田さん」
と、俺に呼びかけてきたのは……端井だった。
「……なんだ?」
「ちょっと、来てください」
と、半ば強引に端井は俺を連れて行こうとする。
「……わ、わかったから! 引っ張るなって」
俺がそういうとようやく端井は俺を解放してくれた。
「早く、来てください」
何かを急いでいるように端井はそう言う。ふと、前野の席を見ると、前野はすでに教室を出ていってしまった後のようだった。
「後田さん」
俺は端井に呼ばれて、渋々そちらに向かったのだった。
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