第191話 席替え(2回目)

 夏祭りが終わった後は特に何もなかった。


 というか、この夏は色々なことがありすぎた気がする。いつもなら、家でゴロゴロしている間に夏休みは終るというのに、なんだか色々詰め込み過ぎた夏だった。


 未だに考えているのは駐車場で聞いた前野の言葉だった。前野が何を言おうとしていたのか……俺はわかってはいるのだが、それ以上を考えないようにしている。


 そして、端井の行動も変だった。なんで俺が帰ってくるのを待っていたのだろうか……考えてもまるで理解できなかった。


 ……と、そんなことを考えている間に、いつのまにか始業式になって二学期が始まった。


 俺はいつものように登校した。前野は……まだ来ていなかった。


「おはよ! 後田君!」


 と、話しかけてきたのは横山だった。


「……どうも。元気そうだな」


「うん! 元気だよ! この夏は色々あったけど……楽しかったしね!」


 なぜか横山は昔を懐かしむような目で俺を見ている。なんだか居心地が悪かった。


「おはよう。後田君」


 横山と話している時に、前野がやってきた。横山は前野に笑顔で挨拶をする。前野も横山に優しく微笑んだ。


「あ……じゃあ、私、行くね」


 と、前野が来ると同時に、横山は席を立って、陽キャグループの方に行ってしまった。


「寂しい?」


 俺がその後姿を見ていると、前野がそんなことを言ってくる。


「……いや、むしろ、元に戻ったって感じだろ」


 陽キャグループで楽しそうに話す横山を見ながら俺はそう言う。


「そうだね。私もそう思う」


 前野はなぜかニヤニヤしながらそう言う。新学期早々食えないヤツである。


「皆! 席に着いて!」


 と、程なくして先生が教室に入ってきた。


「今日は席替えするよ!」


 いきなりでてきたその言葉に、俺と前野は思わず顔を見合わせる。


「……別れってのは唐突なもんだな」


 俺がそう言うと前野は意味深に微笑む。


「そう? きっと、別れられないと思うよ?」


 前野はまるで確信があるかのように、妖しげな表情でそう言ったのだった。

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