第98話 招かれて

 オートロックのそのマンションでは、エントランスで前野に教えられたとおりに部屋番号を入力すると、前野の声が聞こえた。


 それと同時に、ロックが解除され、俺と端井はマンションの中に入っていく。


 エレベーターに乗っている最中、端井はかなり辛辣そうな面持ちだった。


「……おい。大丈夫か?」


「大丈夫なわけないでしょう……私はマンションの位置までは把握していましたが……部屋番号までは知りませんでした。でも! そんな私が今真奈美様の部屋に直接入るなんて……信じられますか!?」


 少し興奮気味にそう言う端井。俺は適当にそれに相槌を打つ。と、エレベーターが前野の部屋がある階に停止する。


 俺と端井はそのままエレベーターから出て、廊下を進む。と、いきなり少し先の部屋の扉が開いた。


「あ。来たね」


 と……それは、前野だった。シャツにジーンズというかなりラフな格好だった。


「あ、あ……ま、真奈美様……」


 端井が俺の背後でアワアワとしている。俺はそれを無視して前野の方に行く。


「……あぁ。無事、来られた」


「うん。じゃあ、早速入ってよ。今日、私以外家の人いないから」


 言われるままに俺は部屋の中に入ろうとするが、端井がなぜか立ち止まってしまっている。


「端井さん? どうしたの?」


「え……あ……わ、私……も、入って良いんですか?」


 すると、前野は苦笑いして端井を見る。


「せっかく来てもらったんだから、良いに決まっているじゃん」


 その言葉を聞いて、ようやく端井も家の中に入ってきたのであった。

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