第97話 服装

 前野の家に行くまでの間、端井はずっとソワソワしていた。


 時折、俺のことをチラチラと見てくる。一体どういうつもりなのかと俺は少し気になった。


「あ、あの……」


「……なんだ?」


 少し経ってから、端井は俺に話しかけてきた。


「わ、私……変じゃないですか?」


「……変?」


 いきなりそんなことを聞かれて俺は困惑してしまった。


 変……俺は今一度端井のことを見てみる。


「……別に、変じゃないが?」


「そ、そうですか……な、なら、いいですけど……」


 それでも、やはり端井は落ち着かない様子だった。俺はジッと端井を見る。


「な……なんですか。ジロジロ見て」


「……お前、もしかして普段はそういう格好しないの?」


「あ、当たり前じゃないですか! 外出するための服なんて持っていませんよ!」


 なぜかムキになってそういう端井。


「……じゃあ、その服は?」


「い、いざという時のための一張羅ですよ……こういう時以外では着たりしません」


「……そうなんだ。大変だな」


 女の子というのはそういう面でも大変だな、と俺は思ったあとで、自分の服装のことが気になってしまった。


 いつも通りの格好で来てしまったが……良かったのだろうか?


「ほら! 着きましたよ!」


 端井にそう言われて俺は我に返る。見ると、そこは大きなマンションの前だった。


 どうやら、前野の家に着いたようだった。

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