第97話 服装
前野の家に行くまでの間、端井はずっとソワソワしていた。
時折、俺のことをチラチラと見てくる。一体どういうつもりなのかと俺は少し気になった。
「あ、あの……」
「……なんだ?」
少し経ってから、端井は俺に話しかけてきた。
「わ、私……変じゃないですか?」
「……変?」
いきなりそんなことを聞かれて俺は困惑してしまった。
変……俺は今一度端井のことを見てみる。
「……別に、変じゃないが?」
「そ、そうですか……な、なら、いいですけど……」
それでも、やはり端井は落ち着かない様子だった。俺はジッと端井を見る。
「な……なんですか。ジロジロ見て」
「……お前、もしかして普段はそういう格好しないの?」
「あ、当たり前じゃないですか! 外出するための服なんて持っていませんよ!」
なぜかムキになってそういう端井。
「……じゃあ、その服は?」
「い、いざという時のための一張羅ですよ……こういう時以外では着たりしません」
「……そうなんだ。大変だな」
女の子というのはそういう面でも大変だな、と俺は思ったあとで、自分の服装のことが気になってしまった。
いつも通りの格好で来てしまったが……良かったのだろうか?
「ほら! 着きましたよ!」
端井にそう言われて俺は我に返る。見ると、そこは大きなマンションの前だった。
どうやら、前野の家に着いたようだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます