第94話 観念

「はぁ!? あ、アナタ……馬鹿なんですか!?」


 昼休み。前野がいなくなった頃を見計らって、俺は端井に話しかけることにした。


 俺が前野に勉強会に端井も来たいと言っているという旨を話すと、端井は信じられないという顔で俺を見る。


「……嫌だったのか?」


「嫌……じゃないです。真奈美様と一緒に勉強会をするのは……アナタとは、嫌ですけど」


 そう言って俺を睨む端井。どうやらとことんまで俺は端井に嫌われてしまっているようである。


「……じゃあ、前野に断ってくるか? 端井が来たくないって言っているって」


「そ、そんなことしたら、私が失礼な人みたいじゃないですか……」


「……じゃあ、来るか?」


 俺がそう言うと腹立たしそうな表情で端井は俺のことを睨んでいる。そして、少し経った後で観念したかのように大きくため息を付いた。


「……わかりました。行きます。行きますけど……先に言っておきます。くれぐれも私が真奈美様のストーカーをしていることは言わないでください」


 小声で俺にそうささやく端井。俺としてもさすがにそんなことはするつもりはない。


「……あぁ。しないようにする」


 不満げな子供のような目で端井に睨まれながらも、俺はそのまま自分の席に戻っていったのであった。

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