第93話 嫌がらせ
「勉強会に……人を増やしたい?」
前野は怪訝そうな顔で俺のことを見ている。
「……ダメか?」
「えっと……言ったよね? 横山さんは呼ばないって」
「……それはわかっている。呼びたいのは別のヤツだ」
俺はそう言ってから、教室の端を見る。俺と目があった瞬間、慌てて横山は俺から目を反らした。
「え……呼びたいのって……端井さん?」
前野は意外そうな顔で俺を見る。
「……ダメか?」
「いや、駄目ってわけじゃないけど、後田君が端井さんと仲良いのって意外だなぁ、って」
……仲は良くない。ただ、これは俺なりの嫌がらせである。すでに教室の端から鋭い視線を感じている。明らかに端井が俺のことを睨んでいるのだ。
「まぁ、端井さんなら、いいよ」
「……え? いいのか?」
「うん。だって、席替えする前のは良く話とかしたし」
……横山は駄目で、端井はOKという理由はよくわからなかったが、あまり深くは利かないことにした。
「……まぁ、OKってことなら、俺は助かる」
「うん。じゃあ、端井さんにも伝えておいてね。ウチに来ていい、って」
そう言って前野は立ち上がる。そして、教室の端の端井に向かって笑顔を向けていた。
端井はその笑顔に対してぎこちない……気味が悪い笑顔で微笑んでいる。
いずれにせよ、こうして俺は前野の家に一人で行くことを回避し、端井に嫌がらせをすることに成功したのであった。
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