第92話 図星

「……私が知らないとでも思っていましたか?」


「……いや、そもそも、なんでお前がそれを知っているのかの方が知りたい」


 俺がそう言っても、端井は何も言わなかった。その代わり、責めるような目つきで俺を見る。


「……で、お前は俺にどうしろと?」


「どうしろ? 別にどうしてもいいですよ……私はただ、腹立たしいだけですから。アナタはどんどん真奈美様と距離を縮めていく。一方の私は離れてみているだけ……それが腹立たしいから、せめてアナタに嫌がらせをしているだけです」


 そう言って明らかに拗ねている端井。俺は少し考える。


 そもそも、コイツは一体何をしたいんだ? 俺にやたた絡んでくるが……コイツが仲良くしたのは、前野の方じゃないのか?


「……あ」


 その時、俺はある一つの答えを思いつく。


「……お前も前野の家に行きたいわけ?」


 俺がそう言うと端井は目を丸くして俺を見る。それから、恥ずかしそうに俺から視線をそらす。


「勝手にそう思えばいいんじゃないですか」


「……いや、でも、明らかにそんな感じを醸し出しているし……」


「そんなことありません! 私、もう帰ります! アナタに嫌がらせしたいだけだったので、用はありませんから!」


 そう言って、端井は本当にスタスタと去って言ってしまった。


 しかし、先程の反応……明らかに図星だということはわかった。


「……となると、選択肢は一つか」


 俺は明日、自身がやることを理解したのだった。

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