第90話 スマホ

 そして、その日の夜。俺はベッドで横になって考え込んでいた。


 前野が俺のことを家に誘った……考えてみると、それは大分とんでもないことな気がする。


 横山の場合は……なんというか、不可抗力で家にまで行ってしまったわけだ。


 だが、前野は自分から家に来ないかと誘ってきたのだ。状況が全く異なる。


 果たして、この誘いに素直に乗ってしまっていいのだろうか?


 と、俺がそんなことを考え込んでいたその時だった。


 いきなり、滅多にならない俺のスマホがけたたましい音を立てて鳴り始めた。俺はかなり驚いてしまった。


「……え? だ、誰だ?」


 表示を見ると、知らない番号が表示されている。迷惑電話……にしてはこんな時間にかかってくるものだろうか?


 俺は出ないでおくことにした。万が一迷惑電話ならば、すぐに切れるはずである。


 と、ほどなくして電話は鳴り止んだ。俺はホッと胸をなでおろす。それからスマホの画面を見る。


「……留守番電話?」


 見ると、留守電が残っている。俺は仕方なく、メッセージを再生してみる。


「どうして出ないんですか」


 いきなり聞こえてきたのは……聞き覚えのある声だった。


「……端井?」


 俺が驚いている間にもメッセージは再生される。


「アナタの家から一番近い公園で待っています。早く来て下さい」


 そう言って、メッセージは停止する。


 俺はわけがわからなかったが……とりあえず、慌てて家を飛び出したのであった。

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