第62話 豪邸

「……えっと、本当にここであっているのか?」


 俺は思わず何度も地図を見返してしまった。


 目の前にあるのは……巨大な豪邸だった。


 いわゆる古いお屋敷のような場所で……ここがあの横山の家だと言われてもまるで理解できなかった。


「……こんなことなら中原に付いてきてもらった方が良かったな」


 かといって、もはやそんな後悔をしていても仕方がない。地図を信じてそのまま正面玄関へと向かう。


 玄関……というか、大きな門を構えるその家の、インターホンを俺は恐る恐る押す。


 ピンポーン、という間の抜けた音が聞こえる。俺はしばらくの間、待った。


「……はい?」


 しわがれた老人の声が聞こえてきた。


「……えっと、俺、横山……さんのクラスメイトなんですけど」


「……あぁ。お嬢様のお友達ですか。少々お待ち下さい」


 ……お嬢様? いやいや……なんだかおかしなことになってきてないか。流石に色々とぶっ飛び過ぎだろう。


 と、驚いていると、門のロックが解除されたようだった。


「どうぞ、お入り下さい」


 老人の声が聞こえる。俺は言われるままに、豪邸の敷地内に入っていく。


 敷地内も完全に豪華だった。いわゆる日本庭園のような場所で、大きな池があるのが目立った。


 そして、そのまま住居と思われる建物に俺は近づいていこうとした……その時だった。


 前方の建物の中から誰かがでてくる。見ると……スーツ姿の老人だった。


「あぁ。どうも、わざわざ申し訳ございません」


 ……老人はどう見ても、執事っぽかった。少なくとも使用人らしい感じだった。


「さぁ、こちらへ」


 老人に言われるままに俺はその後をついていったのであった。

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