第59話 逃走者
「……お前、そういうキャラだったんだな」
お話ししないか、といっても最初に切り出したのは、俺の方だった。
すると、端井は恥ずかしそうにしながら俺のことを睨む。
「昔は……こんな感じでしたね」
「……そうなんだ。今は、違うな」
「えぇ。面倒になりましたからね。こういうキャラを続けるのは」
端井は何かを思い出すように目を細めたあとで、俺のことを睨む。
「そんなことより……いい加減にして下さい」
半分怒り気味に端井は俺にそう言った。
「……何がだ?」
「私は別に今すぐ真奈美様と絶縁しろなんて言ってないんですけどね……それに、別に隣の席の横山さんにまで素っ気ない態度をとる必要はなかったでしょう?」
「……お前と同じだよ」
「は? 何がですか?」
俺はそう言ってなぜか笑ってしまう。気味悪い物を見るかのように、端井は俺を見ていた。
「……面倒になったんだ。だから、一人に戻った。最初から俺は一人だったからな」
そう言うと端井はジッと俺のことを見る。それから急に興味がなくなったようにそのまま背を向ける。
「……一緒にしないで下さい。アナタはただ……逃げているだけです」
端井はそう言い残してそのまま行ってしまった。逃げる……そうだな。俺はいつもこんな感じだった。
でも、それでいいのだ。これからもきっと俺は逃げることを選択する。元々俺はこういう性分なのだから。
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