第3話 失礼

「後田君って、友達いないの?」


 その質問も、放課後、帰りの準備をしてきた時に、急に飛んできたものだった。俺は思わずこちらに振り返ってきている前野の顔をマジマジと見てしまう。


「……え? そう見える?」


「うん。見える」


 ……前野真奈美、意外と……いや、かなり失礼な人物のようである。


「……まぁ、いないかな」


 ここで否定しても仕方ないので、俺は正直に答えた。別に友達がいないことが悪いことではない。ここで、見栄を張って嘘をつく方がよっぽど悪いことである。


 前野はしばらくの間じっと俺のことを見ていた。その綺麗な瞳にずっと見つめられていると、俺としても少し恥ずかしくなってきてしまう。


「寂しくない?」


 前野が次に言ってきたことはあまりにも俺の予想外のセリフだった。俺は信じられないという顔で前野を見てしまう。


 ……いやいや。前野は俺を精神的に抹殺したいのか? 俺のメンタルが豆腐並みに脆かったら、今ここで泣いていても可笑しくないぞ。


「……別に」


 ただ、俺としてもそう返事をすることしか出来なかった。前野はしばらく珍しそうに俺のことを見たあとで、そのまま立ち上がると、教室をでていってしまった。


 ……普通に考えて、失礼なやつだ。アイツこそ、友達がいるのか、と逆に聞きたい気持ちなのであった。

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