第2話 登山舐めてました
六甲山。兵庫県神戸市の西から北にかけて存在し、日本三百名山にも指定されている。
標高は931mとまぁまぁあるが、険しい道のりはなく登山初心者にはもってこいの山である。
で、朝8時、そんな六甲山の麓にある芦屋川駅前にて。
「ろくに運動もしてなかったけど大丈夫かな……」
「大丈夫大丈夫。私も受験挟んだから1年近く行ってないし。明日筋肉痛は確定だろうけどね」
「うえぇ……」
今回荷物は知美に言われた通りにしか持ってきていない。小さめのリュックに水とご飯。そしてスマホにお金。あと万が一のために懐中電灯を。
とりあえず柔軟は必須なので、足を重点的に伸ばしておく。これを怠ると疲労の蓄積具合が大きく違ってくる。
ある程度の柔軟を終えたら、いよいよ歩き始め。
六甲山に登る場合様々なルートが存在するが、今回のように芦屋川駅前から登るとなるとロックガーデンを経由することになる。知美によるとなんでもこれが六甲山を選んだ理由だと言う。
「六甲山はね、岩登りをする箇所もあるし林道を通る箇所もある。山の地形を一通り歩けるしその上険しくないと来た。登山客も多いから安心もできる。初めての人が登るには最高だと思うんだよ」
と嬉嬉として力説する知美。
いまいちよく分かってない私はうん……? と力なく返事するしか無かった。
ちなみに今回の服装は薄手の長袖に長ズボン。もちろん帽子も忘れずに。登山用のは持ってなかったため動きやすいのを選んできた。靴も登山靴を持ってないため、なるべくハイキングに適してるのを履いてきたつもりだ。服に関しては知美から「絶対に化学繊維の物を選ぶこと!」と強く言われてたためそうしてきたが、現時点ではなんでなのかよく分からない。
後々嫌でも分かるようになるのだが。
そうこうするうちにロックガーデンの入口、高座の滝へと到着。
マイナスイオンを感じながら(実際には感じれないらしい。雰囲気よ雰囲気)若干の休憩を挟み、いざ岩登りへ。
「……入口からガッツリ登ってるじゃん」
「まぁねー。岩登りってこんなもんよ。まだ疲れてないし行けるでしょ?」
「鬼……」
まぁ実際まだしんどくはない。緩やかな斜面を歩いただけだし。他の登山客も少なめなのでどんどん登ってみる。
流石ロックガーデンと言うだけあって、両手両足を使ってぐあっとに登る。ただ初心者でも割と登れるって難易度だからやってみると意外と楽しい。
しかし経験者と初心者じゃ登るスピードがまるで違うわけで。
「早いね知美は……」
「楽しいと疲れ感じなくてさ〜。どんどん行っちゃう」
めっちゃ早い。猿かって程に。
最初は楽しいと思えるもののやはり急である事に変わりはなく、10分そこら歩いた時点でへばってきた。
「うぅ……しんどい……いつ着くの……」
「うーん、あと2時間ぐらい?」
「そんなにかかるの!?」
頂上への到着が絶望的に思えてきた。まだ10分なのだ。あと2時間も歩けるとは到底思わない。
「まぁまぁ落ち着いて。多少早い気はするけど、ここいらで一旦振り返ってみてよ」
……? 振り返って何かいいことがあるのか?と疑問に思いつつ言われた通りにしてみる。
「…おぉ」
最初にいた駅がもうはるか遠くにある。住宅街や都市部が小さく見え、既にかなり登ったのだと実感出来る。奥に瀬戸内海すら見えるんだもの。
「これがあるからやめれないんだよ」
と笑ってみせる知美。
数秒前まで感じてた疲れは何処へやら。景色を見るだけで回復出来るなんて凄い。この高さでこのレベルの景色が見れるのなら、頂上からはどんな景色が見れるのだろうか。そう考えると俄然やる気が出てきた。…はっ。とりあえず写真写真。
「前を向いてるとさ、同じ景色ばっかでどれぐらい歩いたとかあんまり分かんないんだけどさ、振り返ると想像以上に景色が変わってるんだよね。上から見下ろすってのもいいでしょ」
「そうだね。もうちょっと頑張れそう」
「そこはもうちょっとじゃなくてもっとって言って欲しい所なんだけどね〜〜」
「んもう!」
私の活力が戻ってきたところで再び行動開始。しばらく進んだところで、不意に広場的な場所に出てきた。
「ここは風吹岩。ロックガーデンの名所だよ」
真ん中にドンとでっかい岩が立ってる。立ってる……ってよりも岩山が突然出てきた……という方があってるかな。高さは7〜8メートル程だろうか。なんか凄い。まるで小学生のような感想だが、事実そうなのだ。
折角なので上に登って立ってみる。
「……怖い」
足元は割と広く、決して落ちる心配はないのだが目の前の景色と相まって余計に怖い。高く感じるのだ。
「足ガックガクじゃん」
「うるさい! 怖いものは怖いの!」
「あはははっ。この調子じゃこの先ずっと震えたままかもねぇ〜?」
にやにやしながら私の事をからかう知美。子供か。って思えるほどにウザかった。
「後で覚えておきなさいよ……」
絶対何かしらでやり返してやると思いつつ、怖いのは事実なので恐る恐る降りた。
ここも1つのポイントなので、軽く休憩をとることに。水をごくごくと飲み、乾いた喉を潤した。
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