第7話 霹靂(へきれき)
やって来た帰りのバスに乗り込むと、京子はただ一つ空いていたバスの席に座りすぐに目を閉じてしまった。
俺は席に着いた京子の前に立っている。やや下を向いて目を閉じている京子の顔が青白くみえた。
何も会話することもなく、バスは俺たちの降りる停留所の手前までやって来た。
「京子、次だぞ」
「あっ。少し寝てたわ。ありがとう」
次のバス停でバスを下り、京子の住むマンションの前で、
「祐介、今日はほんとうにありがとう。楽しかった」
「ああ、? それじゃあ」
いったい今日の京子はどうしたんだ?
「ただいま、母さん」
「お帰りなさい」
俺も京子ではないが、すこし疲れたので自分の部屋で着替えを済ませて、ベッドに横になっていたら、夕方になっていた。
昼のスパゲティーが思った以上に重かったらしく、夕食は軽めに済ませ、何となく勉強机に向かって先日買ったラノベを読んでいたらいい時間になったので、ベッドにもぐりこんで寝てしまった。
フワーンフワーン、フワーンフワーン。
夜中、家の近くで鳴っていた救急車のサイレンで一度目が覚めたが、また寝てしまった。
翌日の月曜日。かなり早くに目が覚めた。
きのうの京子のことを思い出しつつ、朝食をとり、制服に着替えて家を出た。小学校の低学年までは京子と連れだって登校していたのだが、三年生くらいから別々に登校するようになった。昨日のこともあるので、今日は、京子と一緒に久しぶりに学校に行こうかと思って、京子の住むマンションの前でしばらく京子が出てくるのを待つことにした。
今日は生ゴミの日らしく、道路に面したマンションのゴミ置き場でおばさんたちが話している話し声が俺の方にも聞こえてきた。
「夜の夜中に救急車がやって来たのには驚いたわよねー」
「そうよね。乗って行ったのは花沢さんの娘さんだったみたいよ」
えっ? 京子が救急車? えっ? このマンションに花沢というそれほどメジャーでもない名前の家は京子の家しかなかったはずだ。
「可愛い娘さんなのにねー。どこが悪かったのかしら? ……」
俺は、頭の中でくるくるといろんなことを考えて、どこをどう歩いてきたのか、気が付いたら始業間際で学校の校門をくぐっていた。
なんとか遅刻せずに教室に滑り込んだ俺は、京子の席を見たがもちろん席の
俺が席に着くとすぐに担任の先生が教室にやって来て、
「今日は、花沢は欠席だ」
そう告げられた。それ以上京子については何もなく、ホームルームはすぐに終わってしまった。
確かめはしなかったが、今日の生徒会はさすがに休みだろうと思い、放課後、急いで教室をでた。教室を出て廊下を玄関に向かい歩いていたら、生徒会の副会長の黒ぶち眼鏡が後ろから俺を追ってきたようで、
「松田、ちょっと待て」
「?」
「おまえ、花沢さんのことを何か知っているか?」
「知らない」
「本当か?」
「うそを言ってどうなる? 生徒会は今日ないんだろ。それじゃあな」
こいつ、物のたずね方も知らないのか? 何だか相当ウザいやつだな。
玄関にやって来た俺は、すぐに靴を履き替えて学校を後にした。
「ただいま」
「お帰んなさい。ずいぶん早いのね。それはそうと大変なことになったわね。あなたも聞いてるでしょ? 京子ちゃんのこと」
「いや、今日休むという連絡があったらしいことだけ」
「あら、そうだったの。大変なのよ。京子ちゃん
「変な時に行って邪魔しても悪いから、俺も母さんと一緒に行くよ」
「そう、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます