膵臓・オリンピック・中止
最近、昔のことをよく思い出す。歳をとったからなのか、こんな時勢で余計なことを考える余裕が生まれてしまったからか、どちらにせよ昔を思い出してはため息をつくことを繰り返しているのには変わりない。
一緒に体が鈍っていくのもこんなに感じたことはない。昔はオリンピックを目指してトレーニングもしていたし、競技を辞めてからもそれなりの運動をしていたものだが、それも徐々に行わなくなったのがすべての原因か。仕事の忙しさにかまけて運動なんて忘れ始めている。それでも危機感だけは溜まっていくのだから、心配事も絶えない。
へたに運動していたものだから食欲は旺盛。体は欲していないのに、食べられてしまうのものだから突っ込むだけ突っ込む。食べ過ぎなのは頭で理解していても、胃が空いていると認識してしまえば、食わずにはいられない。だから膵臓や腎臓が弱っていないか、気にしながらの食事になっていく。
適度な運動をしていれば、それこそ昔みたいな負荷をかけていれば今の食事でも大丈夫なのだから、久しぶりにトレーニングを再開すればいいのだ。幸い時間は余り始めている。今からでも遅くはない。
でも……昔の記憶を思い出すのが少しだけ辛い。そんなことにいまさら気づくなんて、ずっと目をそらして生きてきた証拠なのだと痛感してため息は止まらない。
自分の身を忙しさの中に置くことで、忘れようと必死だったのだ。しかし、記憶は風化なんていっさいしていなくて、少しでも時間があればこうやって思い出してしまう。それもきっとちゃんと向きわなかったからだ。きっと自分の中の壁を乗り越えられておらず、その壁は目の間にそそり立ったままなのだ。迂回しようとしてもどこまでも続くその壁は常に隣にあって、目の前にないだけだった。
ちゃんと向き合わなくてはならないのかも知れない。今のこの状況はそのための時間なのだと、そう言われているようにも思えてくる。
目を逸した時間は長すぎて、オリンピックが中止になって期限が伸びようが、もはや届かないものだけれど、ちょっとずつこの壁を壊さなくてはいつまで経っても心が落ち着きそうもない。
そう思うとこれは呪いなんだ。自分で自分にかけた呪い。解呪する方法は未だどこにあるかもわからない。けれど、一個ずつ、確実に潰していこうと思う。
まずは運動と食事制限からだ。そう思いながら明日からで今日は何を食べようかなんて考えてしまっている以上。人間はすぐには変われないのだと、そう思う。
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