ワルキューレ

ルン

第1話 アリサ

そう言えば、随分昔にこんなことを聞いた記憶がある。「どうしてんなに頑張るの?」と。

返ってきた答えは至極単純だった。「魔法が使えた方がかっこいいじゃん!」

こんな子供じみたバカな返答する彼女は私の友達だった。彼女の名前はミク。

基本バカで間抜け。一度こうと決めるとその決めごとは決して曲げない。にも関わらず、自分が納得すれば今までと真逆の意見もすんなり聞き入れる。つまり端的に言ってしまえばミクは一つの方向からしか物事を見られない。相対的という言葉を知らない。いや、知ってはいるのかもしれないけど、、、いや、やっぱり知らないと思う。だってバカだから。でも、だからこそミクの見る世界はいつも一つで、その世界にはこの世の全ての人たちがいる。ミクの世界にいる人たちだって当然泣いて笑って怒って嘆く。人それぞれもちろん違いはあるけれど、それでも彼らは同じ世界にいる。同じ言葉を話している。だから彼らは方法さえ間違わなければ、きっと手を取り合える。悲しみも苦しみも楽しさも切なさも何もかもを分かち共有できる。そしてみんなで前に進める。そんなちょっと強引でとても残酷な世界。そんな世界をミクは毎日見ている。そしてこれからもきっと変わらず見続ける。私はその世界を「強引」とか「残酷」と言ったけれど、ミクは決してそんなことを思ってはいない。ミクの見る世界はとても綺麗で幸せな物だ。私はそれを否定しない。けれど、ミクにもミクの世界があるように私にだって私の世界がある。それはミクとは違う。どうしたって分かり合えないことも、どうしたってやりきれないこともある。諦めることが悪いことだとは思わない。戦うことが正しいとは思わない。前に進まなくたって、道に迷い続けたって構わない。それでも、そんな世界をミクは許さない。道に迷ったら目的地までのルートを教え、諦めそうになったら体を引っ張り上げてでも下を向かせない。何を頼んだ訳でもないのに、ほっといてくれと言う人さえいたのに、それでもミクはそんな彼らを見捨てはしなかった。


そう言えば私の紹介をまだしていなかった。私の名前はアリサ。自分で言うのもなんだけど頭脳明晰で才気煥発。幼い頃は本当に一時、神童なんて呼ばれいた。今だってそう。私は成績優秀で模範生徒。

私の説明はこれくらいで大丈夫だと思う。だってきっとこれは私の物語じゃ無いから。きっとこれはバカで間抜けな彼女の物語。私を私として認めてくれたミクの物語だから。

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ワルキューレ ルン @rune01

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