暖かな三月、昼下がりのこと

 商店街に、はなびらふわり。

 一枚、そっと、落ちてくる。

 少し離れた、地面にひらり。

 人波かき分け、落ちてくる。

 どこから、やってきたんだろう。

 高い屋根のある、この場所に。


 歩いて近くに、寄ってみる。

 灰色タイルに、触れたはなびら。

 ゆっくりしゃがんで、つまんでみる。

 少し白っぽい、薄桃色。

 薄くて、なんだか破れそうで。

 怖くて、だけど、愛しくて。


 ふっと、風が、吹いてきた。

 斜め前の、小道から。

 大通りから、吹いてきた。

 そちらに向かって、一歩、二歩。

 呼ばれるように、駆けていく。

 明るい方へ、日が差す方へ。


 一瞬、眩んだ目を閉じて。

 そしてゆっくり、目を開けた。

 目の当たりにした、桜のトンネル。

 降り注ぐはなびらの、雨を受け。

 ここから来たの、と、呟いた。

 暖かな三月、昼下がりのこと。

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