0/8.

 起き上がった。


 身体。


 大丈夫。ちゃんと動く。両手もある。


 目の前。


 驚いたような顔。何か声を発する前に、膝を叩き込んだ。


 相手が崩れ落ちる。


「よし」


 動ける。記憶もちゃんとある。


 身体に異常はなかった。


 倒れた男の口に靴を突っ込んで。


「俺に何をした」


 少し踏む。歯が数本折れたあたりで、靴を口から出してやる。


「まだ喋れるだろ?」


 言いながら、膝を極めて折った。骨と関節が外れる、小気味良い音。


「どうした。はやく喋れ。もう片方の足も折るぞ?」


「は、話す。話し」


 そこまで言った男の顔を、軽く殴った。一度。二度。三度。四度。


 これを繰り返すと、人の心は、ゆっくり、壊れる。


「やめろ。やめてくれ」


 男。奇声を発し始めた。


 良い頃合い。


「俺に何をした」


「電気を。コンセントから逆流させて、電流を流した」


「そうか。電気か」


 鳩尾に靴をぶちこんだ。


 男が、嘔吐する。吐瀉物。


「よし。ここは現実だな」


 それを見て判断する。


 吐こうとして吐けるのは、現実。

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