05.

 異世界転生など、ありえない。


 人は心臓が止まれば死ぬし、死んだ先にも何もない。無というのは、それを定義した時点で無ではない。


 天国やあの世と同じような、単なる、概念。


 自分は今ここにいて、この景色が、ゲーム世界が、見える。それだけが重要なことだった。


 これが見えているかぎり、自分はまだ、死んでいない。


 そしてこれは、自分が資料で見ていたゲームの世界そのもの。ここなら、立体的に、実際に、調べることができる。


 誰もいない。


 私だけの世界。


 他のキャラクターも、一切存在しない。背景透過と、画像処理と、オブジェクトのみがある、虚無の世界。ゲームであって、ゲームではない。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る