相互を語りたくなったかもしれない
いある
一人目 ほたるび
まぁ僕の相互の中で誰をはじめに語るべきかと言われれば彼女以外にいないだろう。いや、いないというか、そうすべきであると僕が勝手に思っているだけなのだが。あまりうだうだと前座を並べても仕方が無いのでさっさと先に行こうと思うが、決して文字数がこれから先他の人物に対するそれより少なくなったとしても、別にその親愛が劣っているとかそういうことではない。あくまでこれは趣味で手慰みであり――勉強をしろという指摘はそれはもう全く以て反論の余地がないのだけれど――深い意味を決して持つものではないのだから、僕の脳内の隅の隅を覗き込むようなイメージで目を通していただければと思う。
で、ほたるび。まぁどういう人物なのかと言えば僕の嫁なのだが。いや、結婚しているわけではない。だが待ってほしい。結婚しているからこそ嫁だという安直な考えはここで捨て去っていただきたいというか、そもそもそんな考えはナンセンスだと僕は一石を投じたい。結婚とはあくまで形式であって、嫁とはその呼称に過ぎない。で、あるならば別に彼女のことを僕が嫁呼ばわりしようがどうしようが勝手というものではないだろうか。もちろん賛否両論というか非難轟々なのだろうけれど、そんなものはさておいて、僕が嫁と定義する彼女について話していこうと思う。
とはいえ何もかもを洗いざらい喋るのもいささか問題があるだろう。仮にも三年くらいお付き合いさせていただいている者として、それなりに適切な秘密の確保のやり方というのは理解できて来たけれども、それでもやっぱり難しいものは難しい。
彼女は僕と同学年。同級生だ。僕が小学一年生の夏にこの土地に引っ越してきてからの付き合いである。かといって一般的な幼馴染のような関係かと言えばそうでもなく、なんなら関わりにくさを感じられていた――僕の方はそうでもないのだが――こともあって、言葉を真面目に交わし始めたのは中学三年生だとか、多分その変だと思う。
小学校の頃は微妙に接点がなかったようなあったような、それでいてやっぱりなかったような、そんな感じだ。友達の友達と知り合いの中間くらいとでも言おうか。互いの名前は知っているけれど、話をすることはない。一緒に遊んだりしたことはもしかしたらあったりしたかもしれないけれど、そこに特別な感情どころか互いに対する明確な意識というものすら存在していなかったように僕は思う。
当時の僕がまぁまぁひねくれており、かつ激しいイキりに身を焦がしていたからこそ(この話は正直思い出したくない。地獄のような苦しみが僕を苛む)、こうして接点が生まれなかったのだ。当然である。僕のような人間がいたらどうするか、避けるだけである。それは実際のところ――高校三年生となった今であっても――正しかったと言えるし正しいと言える。
とはいえこうして僕たちが仲良くなり、曲がりなりにも愛情を言葉にしあっているのにはそれなりにどろっとした、またもやっとしておえっとした過程がある。過程に関して話を聞くと質の悪い昼ドラを見せられるような気持になり、また僕も過去に他の人からの想いをお断りさせていただく形になったことにも言及せざるを得ないし――なんなら僕が世界で一番嫌っている、デスノートを拾ったら初めにでかでかとひらがなで六ページにわたって名前を書き込んでやりたい男のことにも言及しなければいけなくなるから、僕はもうこの件については説明を省く。いつか話すかもしれない。
で、ここまで読んでくれた気丈で奇特な方々は思うだろう。いや、お前の思い出話じゃねえか、紹介しろよ、と。いや待ってほしい。僕としてもこのタイピングほとんど止めずに打っているからして、思考に関する秒数というのはせいぜい0コンマ一秒とかそういうレベルなのだ。だからそこに深い考察や構築を求められても困るのだ。最初に僕が述べたように、意味不明な速度で流れ続ける僕の思考の片鱗にでも足を突っ込んだと思ってここまで時間を無駄にしたことを後悔するか、あくまで僕のことに興味を持ってくれるというのであれば、これからもう少しだけ時間を無駄にしていってほしい。
というのも、これから語るほたるびんの生体、というか生態には多分な主観的な判断を含む――らしいからである。
ほたるびんは可愛い。非常に。世界で一番かわいいと僕は常日頃口にしているし、またそれが間違いだと思ったことは一度もない。自分のことを愛してやまないナルシストである僕と言えど、彼女の前では醜き醜態(頭痛が痛そうだ)を晒すことは憚られてしまう、それくらい可愛らしい。
毎日でも鏡に何故か映り込んでほしいし、排水溝を除いたら十分の一で現れて目を合わせてほしい。僕が人間として生きていけるのも、また人間としての品格というか常識というかまっとうな性癖だとか、そういう大切なものをもろもろ失ってしまったのも彼女に起因するところである。要するに人生を狂わせやがったのだ。
ともあれ僕はその狂った人生――度々人外呼ばわりされる僕だから人外生とでも言うべき命の旅路には、それなりに満足している。
気遣って撫でてくれる掌の温かさも、僕のために泣いて怒ってくれる遠慮のなさも、また僕の意味不明な性癖を『殺すぞ』と叫びたいのをこらえて『気持ち悪い』の一言で済ませてくれる点も、すべて今日の僕を構築するパーツと化しているのである。
というところで彼女の紹介を終了する。またほたるび大考察会第二弾(一度も開催はしていない)とか血迷ってするかもしれないけれど、その時はどうぞみんな裸で僕に駆け寄ってきてほしい。たくさん警察を呼びたいんだ。
え?意味が分からない?何を今さら、僕が意味の分かることをこの場で話したことが一度でもあったのか?許せない。もしこんな僕の駄文を読んで一ミリでも何かを学べたというのなら筋違いと思い違いと勘違いのオンパレードであり百鬼夜行である。
けれども、それでも続きを読むという素晴らしいマゾ根性をお持ちの方は次の人の紹介も見ていっていただきたい。暇つぶしというか人生潰しくらいにはなるかもしれない。死にたくなった時にでも、読んでから、そしてやっぱ人生ってごみだわと思い直してから死んでいただきたい。
それでは。
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