天・対・間測〜宇宙少年シリーズ〜

狗帆小月

【2】

第1話 味方

 ニュースでは「赤い星が消えて引き続き紫の星が近頃消滅する」という話題で持ちきりだった。

 どうせ綺麗なんだろう、見なくたってわかる。「赤い星」の時とは違ってゲリラで起きない。だから以前より景色を待ちわびる人は多いだろう。SNSでは写真が上がったり動画が上がったり、「綺麗だった」だの「一生に一度の経験だ」だの書き込まれたらするのだろうか、未来のことだからわかりはしないけど。

 「よし、聞こう。」

 大学に入って一層黒くなったあかねは独り言かのように、それにしてはかなり大きめの声でそう発した。

 高校3年生の夏から1年もの間宇宙で眠っていた俺は大学や専門学校に行けるわけもなく、薬局でバイトをする日々を送っていた。勿論「俺が消えたのは宇宙に行ったから」なんて話は通用せず、お父さんは周りに失踪したと伝えていた為あかねは相当心配していたらしい。そのつけを払うと言うか、海斗との約束を守るためと言うか。俺は都合が合う日にはあかねを大学から家まで送っていたのだ。

 「ねえ。紫の星、一緒に見る?」

 俺の顔を伺いながらそう聞いてきた。

 伺う、というのは俺と行きたいから駄々をこねたという意味じゃない。あかねは俺に気を使っているんだ。

 俺からしたら「赤い星」の消滅は心地のよい景色ではなかった。確かにあの日、たまたま見れた現象に心打たれ見惚れてしまったのは真実だ。しかし結果から言うと、その光景こそが俺と海斗の節目を作った断片なのだ。

 いい思い出では無いけど、これからいい思い出を作れるのならその瞬間だけ忘れようと思えた。

 「気、使わなくていいよ。俺らの関係だろ?予想はいつだっけ、確か11月8日か。」

 「うん、そう。大丈夫?予定ない?」

 「無いというかまだシフト決まってないから、その日は空けとくよ。」

 「ありがと、楽しみにしとく!」

 話が終わる頃、丁度あかねの家まで着いたのでここで俺も家へ帰ることにした。

 11月8日なら2週間後か。

 空が紫に染まっていくところを想像しながら夜空を見上げた。

 「俺、あかねのこと幸せにするよ。」

 空に語りかけるロマンチストと思われてもいい。でも俺にとってはあの綺麗な星たちが海斗自身にしか見えないんだ。

 「赤い星」のように、君を2回も死なせやしない。


 歩くペースに合わせる為に押していた自転車にまたがり、今日の夜ご飯は何か考えているとスマホに1本の電話と1件メッセージが来ていたことに気づいた。

 「誰だ?」

 メッセージを開けて名前が表示された時、驚いたてしまった。1年も音信不通だった相手なので仕方ない。こちらから連絡すればよかった話だがそうもいかず、向こうからしても話しずらかったのだと思う。

 『相談がしたい、いつ会える?』

 その一文だけだが少し鼓動が速くなってしまった。驚愕で、ではなく、緊張で。

 

 その相手は海斗の父を殺した張本人、『大西圭悟』だった。

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