第55話 森を返せ

「千年巨人を倒すには、恐らく相当な火力が必要だ。その証拠に、今千年巨人は火炎による大きな攻撃を受けているにも関わらず、体には一切の傷がついていない」


 無傷の千年巨人。

 それを前に、イージスたちは話し合っている。


「あの化け物を攻略するには、恐らく相当な火力が必要だ。でなければ傷一つつけられないだろうな」

「だが千年巨人のエネルギーが全て消費されるのを待つ、というてもあるぞ」


 述べたリーフの意見に、アニーは頭を抱えて返答をする。


「あれは過去の兵器だろう。その場合、あの兵器には相当なエネルギーが組み込まれている可能性が高いんだ」

「どうしてだ?」

 今は安全性を考慮して貯蓄させるエネルギーを百パーセント中の五十パーセントにしているから。だが昔の兵器は百パーセントのエネルギーを蓄積させていた。つまりはあれが止まるには最低でも一時間以上はかかる。それほど時間が経てば魔法使いは全員魔力を失う。助けを求めようにもここは魔法学園からも魔法ギルドからも離れている。さすがに無理か……」


 アニーは考える。だが、何も思い付かない。


「なあ君たち。我らが隊長、エクイオスに協力してくれないか?」


 そこへ現れた一人の兵。

 彼はアニーたちへ敬意をはらって敬礼をする。


「私はスプリッド=コウメイ。エクイオス隊長の部下であります」

「挨拶など今はいい。私たちが協力すれば千年巨人は倒せるのか?」

「はい。もし千年巨人の足止めをしてくれるのでしたら、その間に我々は魔力をエクイオス隊長へと注ぎ、特大の魔法を放ってくれるはずです」

「ああ。是非とも協力させてくれ」


 アニーは間を空けず答えた。


「では足止めをよろしくお願いします」


 そう言うと、スプリッドは走ってエクイオスのもとへと向かう。


「ではいくぞ」

「ああ。千年巨人の足止めくらい、僕たち四人で事足りる」


 イージス、アニー、イスター、リーフの四名。

 彼らは今、千年巨人を前に、戦いを挑む。


「夕焼けの剣」


 イージスは夕焼けの剣を握り、中段で構える。その間、既にイスターが千年巨人へと駆けていた。


「ワタシも兵器であるのだから、千年巨人、お前の足止めなど余裕だ」


 イスターは両腕を変形させ、巨大なマシンガンへと変わる。イスターはその腕を千年巨人の頭部へと向け、無数の銃弾を千年巨人へと浴びせる。

 激しい重低音が響き渡るも、千年巨人の体には傷がつかない。

 千年巨人は腕を振り上げ、イスターへと振り下ろす。


「させるか。〈絶対英雄王剣アーサー〉」


 イージスは剣を振るい、千年巨人の腕を吹き飛ばした。すかさずイージスは千年巨人の足の上を走って上へと上る。だが千年巨人が足を振り上げ、イージスは吹き飛んで家屋へと衝突した。


「〈風錠エルグマ〉」


 アニーは千年巨人を風の鎖で縛る。


「捕らえた……わけないよな…………」


 千年巨人は容易く風を破壊して、アニーへと拳を振るう。


「古代魔術、〈決壊けっかい〉」


 リーフが謎の線が入った右腕を千年巨人の体へとかざすと、千年巨人の振り下ろした右腕は砂のように容易く砕けた。


「何だ!?今の魔法は!」

「これは私の森に伝わる古代の魔法。だけど使うと……相当な魔力を消費してまともには動けなくなる……」


 リーフは右腕を押さえ、しゃがみこむ。

 相当な魔力を使ったのか、リーフの息は荒くなっている。


 右腕を失った千年巨人は、口に純白の光を溜めている。何をするのかと皆が凝視していると、口から純白の光がレーザーのように放たれ、森が一瞬にして火の海と化した。


「私たちの……森が!?」

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