マリオネット・プラネット
@epb
第1話 シャイアン
地球 ユニオン連合 旧アメリカ合衆国 シャイアン・マウンテン空軍基地
ジェレミー・グリーア曹長は、自分の指揮する装甲車輛のキューポラから半身を出し
ヘルメット内蔵カメラからの鮮明な画像をヴァイザーに表示せず、裸眼で双眼鏡を覗いていた。
もう30分もしないうちに、空から、金属と樹脂で出来たデッカイお人形さん達が降ってくる。
グリーア曹長の任務は、大きな輸送機が、お人形を地上へ落とす前に、撃破判定をお見舞いすること。それでも降りてきたお人形に友軍と連携して、同じく撃破判定をお見舞いする事だ。
ここ暫く、シュミレーターカプセル含め、演習とはいえ、空から降ってくるお人形さん達を、撃つ任務が続いている。お人形ごっこには、いい加減うんざりしている。
パシッ!…双眼鏡を持つ左腕に蚊が留まっていたのだ、まだ血は吸われてないようだ。
「非公式の撃破判定ですね。曹長殿」ガンナー用キューポラからマーティン・ゲインズ上等兵が顔を出す。「最近の蚊は、刺されても痒くならない筈ですよ」
上等兵は最近、別の基地から転属してきた。非常にハンサムだ、まるでセクサロイドの最新モデルのようだ。そう言えば以前、彼に見せてもらったホロビューに、姉か妹が映っていたが、こちらも非常に美形だったと思い出す。
「えらい世の中になったものだな…。でも、オレたちの世代は、条件反射で叩いちまう」
人類を一番多く死に追いやっている昆虫である蚊は、近年、病原菌も運ばず、痒みも引き起こさないように改良された雌の個体を、人類が大量に世に放ち、交配が進んだお陰で以前ほど厄介モノ扱いは受けなくなった。情報として人々はそれを知っているが、大半は殺そうとする。
羽音を不快と感じるのは、人が生まれてから習得した事なのか、それとも生まれる前、遺伝情報の中にある不快の記憶がさせている事なのか…。
グリーア曹長は、蚊の残骸が残る自身の腕を指で軽く払い、左手首に巻かれている ミッキーマウスウォッチと兵士達から呼ばれている演習用のタクティカルバンドを無表情に見入る。
ピ!機械音と共に無線が入った。南側に展開しているボスからだ…「レーダーに機影反応!各車輛、対応求む!」
「お出ましだ!」グリーア軍曹の声と共に、両名キューポラへ潜り込む。
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