ガラス越しの花嫁 〜PIANO PLAYER〜

駿 銘華

第1話 ひとりごと

 私は鍵盤をたたく


 見知らぬ人たちのために


 それは誰にも知られる事のない


 限られた時間


 閉じ込められた空間


 つながった気持ち


 ひびきあうメロデイ


 そして


 はなれていく想い




 静かな部屋に


 鍵盤の音だけがひびく


 孤独ね


 不安よ


 寒い


 埋まらない穴


 治らない傷あと


 かくそうとしても


 さらけだしてしまう


 かりそめのリアル


 実らないパッション


 しばられたフリーダム




 鳥はそらをとび


 リスはかけまわる


 おさんぽの犬


 ひなたにいる猫


 おひさま


 ぬくもり


 ほほえみ


 情熱


 幸福


 そしてまた


 別れのときがやって来る




 私は透明なウェディングドレスを


 身にまとったお人形


 そしてさみしさをかかえた人たちだけが


 私をたずねてやって来る




 待ちつづけるの


 こたえてあげるの


 笑いかけるの


 いとおしむの


 ささえあうの



 これはお金のため?


 これは誰かのため?


 ちがう


 私が私でいるために


 とてもたいせつな時間なの




 そして


 今日もまた


 私はそっとガラスの扉をひらく




 そうよ


 私は透明なウェディングドレスを


 身にまとったお人形




 そして


 今日もまた


 誰かが私をたずねてやって来る

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