終章 第1話 ふたたび

「すないぱぁぁぁぁ」


 全力で叫ぶ。


『わかった』


『いやうるさいから。耳が飛ぶわ』


『確認しました。狙撃位置につきます』


 狙撃されると、一撃でダウンする。そういうゲーム。


 チームメイトが、素早く、確実に物陰に隠れる。ひとりだけ、上に陣取って。


『で、どこよ?』


「建物2階。ふたり」


『ふたり?』


「芋(その場に伏せて動かない狙撃手)がふたり。目の前の建物2階です」


『芋掘り(狙撃手倒しの突撃)やるかあ』


「じゃあ、私が犠牲になります」


『ぼくが周りを牽制します』


 物陰から飛び出して。


「うおおおあ」


『うるさいから。耳がしぬから』


 撃ってきた。


「すないぱぁぁぁぁ」


『わかった。わかったから』


『確認しました。がんばって走って』


『牽制狙撃開始します。狙撃位置から射線の通らない位置をマーク』


 ボタン連打。ひたすら連打。スライディングして。ジャンプして。またスライディング。


「はやくっ。はやくしてっ。指がしぬっ」


『はい。おっけいです。倒しました』


『こちらも制圧しています。そのまま突撃してください』


「うおおおっ。すないぱぁぁぁぁ」


『いや、もう相手の狙撃手倒したから』


『狙撃で掩護します』


「いけめんすないぱぁぁぁぁ」


 敵に向かって走れ。いつか自分が倒れる、そのときまで。


 過去は変えられない。未来には何もない。それでも、今このときを。せいいっぱい、声を挙げて走る。楽しむ。今を。すべてを懸けて。


「すないぱぁぁぁぁ」

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犠牲 春嵐 @aiot3110

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