第26話 帝国の遺産

『皇帝ブレインズになった皆様は帝国禁呪の魔導術式巻物を閲覧できるようになりました。その中には【転移門】の魔導術式もあります』


 帝国のホストコンピューターに就任したサリナが、帝国の全データを分析しながらそう報告してくれた。



「ねぇねぇ、ソウちゃん。【転移門】って、どういうスキルなの?」


「ゲームとかラノベだと【転移門】は他の場所にワープできる門を開くんだよ」



『その通りです。転移系のスキルは1度訪れた場所に一瞬で移動できるスキルです。帝国では禁呪と成っていましたから(禁呪魔法の使用は皇帝の許可が必要)、5万年間も睡眠学習をした皆さんですが、まだ禁呪魔法を学んでいませんし習得もしていません』



「ふ~ん……サッちゃん、それはどうやって使うの?」


『魔力インクで魔導術式を正しく描けば、習得していない魔術でも発動できます。しかしながら魔術により必要な魔力量が異なります。より複雑な上級魔術になれば魔力消費量が増えますし、マナが足りなければ魔術は発動しません。しかし、足りない分は魔力を注ぐ人数を増やしたり、マナが充填されている魔石等により補えます』



「サッちゃん、俺達は【転移門】で地球に帰る事が出来るかな?」


『転移系のスキルは、1度でも訪れた事がある場所なら行く事ができますので、皆様の生まれ故郷の地球は勿論大丈夫です。ただし、移動距離や移動人数や所持品等の体積が増えれば消費魔力が増えますので、遠い地球に迄【転移門】を繋げるには、非常に大量の魔力が必要になります。皆様の魔力全てを注いでも間に合わないので、魔石にマナを溜めて魔力の足しにしなければなりません』



「サッちゃん、【転移門】が繋がればスグに地球に帰れるの?」


『はい、その通りです。5万年間も宇宙船で航行する必要はありません』


「「「「「ヤッタァァァッ!」」」」」



『解決策の1つとしての提案ですが、再び帝国の首都を破壊されない様に、逃げた凶悪な魔物達を討伐して。その魔石を【転移門】に使ったらどうでしょうか?』


「ふ~ん、それって簡単なのかなぁ? 逃げた魔物達は何処に居るか分からないのでは?」


『魔物にも帰巣本能があります。ゲームで言うところのポップ場所に似てると思ってください。逃げた魔物の生態系がホストコンピューターのデータに残っていますので、近くの巣から当たってみましょう』



「帝国首都を破壊するほどの凶悪な魔物を俺達だけで討伐出来るのかなぁ?」


『アンドロメダ銀河では、勇者パーティーが聖剣や聖武具を使い、科学技術も投入して、凶悪な魔物を捕獲していたのですが、良質な魔石を獲る為にも是非倒さなければなりません。皆様なら出来るでしょうし、皇帝一族が宝としている聖武具を装備して戦えば、より確実に勝てるに違いありません』



「じゃあ、地球に帰る為に討伐の旅に出よう!」


「「「「おぉぅ!」」」」



『まずは宮殿に戻って聖武具を持ち出しましょう。そろそろ宮殿の修復も終わっているかもしれません』


「早いんだね」



『宮殿はホストコンピューターや宝物庫等の重要な設備がありますので、優先順位が高いのです』


「そうだったね、サッちゃんもホストコンピューターに成ったんだもんね」


『はい、皆様のお陰です』



 一行は宮殿宝物庫に向かった。

 宝物庫には魔導科学兵器である帝国最高の武器が保管されていて、それは即ちアンドロメダ銀河最高の武器であるという事だった。


 そこには沢山の宝と魔道具とハイテク魔導兵器があり、特に目を引いたのがSSR巨大ロボだった。


「凄いね! これ程の科学兵器だったら、巨大魔獣と余裕で戦えそうだよ」


 しかし、帝国の最高傑作であるSSR巨大ロボは起動しなかった。


『残念ながら皇帝専用SSR巨大ロボを起動する為には、王族の血が必要となっています』


「はぁ、残念だけどロボ無しで魔物退治に行くしかなさそうだね?」


 その時ミィちゃんがトットットッと進み出て、ロボの足に何気なく触れた。


 シュィイイイイインッ!

 ヴゥウウウウウウウウウウンッ!


『こ、皇帝の一親等血族を確認しました!」



 なんとミィちゃんが皇帝の娘だった!

 兎人族である彼女の母親が、皇帝と結ばれて生まれたのがミフィーリアだったのだ。


「えぇ~、私のお父さんって皇帝だったんだ~!?」

 本人も知らなかったと言う。



『確認された唯一の皇族であるミフィーリア姫を皇帝に指名しますか? 皇帝ブレインズの多数決で決まりますが』

「「「「「賛成!」」」」」


『ミフィーリア姫が第777代イプシロン帝国皇帝に就任いたしました。皇帝ブレインズ方と共に帝国再興発展に尽力下されますようお願いいたします』


 どうやら元首と閣僚が唐突に揃ったらしい。



「「「「「おめでと~う」」」」」


「ありがと~う。文芸部員5人は俺の嫁ぇ!」

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