12.

「わたしと同じだ」


「あなたも?」


「わたしは強くなくて。いじめられてて。それで、けがをしちゃって」


 彼女。今日は草のついていない、横顔。


「その治療のために、今度、月に行くんです」


「月」


「治療は月じゃないんですけど、お月見の頃には、月に行くんです」


 彼女。嘘をいっているようには、見えない。


「あ、いま。おかしいこと言ってるって思ったでしょ」


「ええ。まあ」


「ありがとうございました。今日まで。さっきも。支えてもらって」


 彼女。


 立ち上がる。


「あっ」


 彼女の。


 右腕が。


 落ちた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る