09.

「あ、いたいた。おぅい」


 声。


「ちょっと風邪をひいてて。でももう、治りました。今からそこに行きます」


 彼女が、登ってきている。ゆっくり、ゆっくりと。


 立ち上がった。


 いつもなら。そこのあたりで。転ぶ。


「あっ」


 彼女がよろける。


 転びそうになったところを、支えた。


「ありがとう、ございます」


 寄り添って、歩く。すぐ、丘の頂上。


 彼女が座るのは、右隣。


「やさしいんですね。あのときと同じ」


「あのとき?」


「いいえ。気にしないでください」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る