自分だけは上手くいく
いくら刃物を手にしていても、<
この<
だから、たとえ死罪になるような悪事であっても、やれてしまう。
『自分は上手くいくから死罪になんかならない』
って思ってるみたいなんだ。
でも、死罪云々はともかく、『自分だけは上手くいく』なんてないんだよ。
確かにここまでは上手くいってたかもしれなくても、今日はもう駄目みたいだね。
<さすまた>の柄の部分を脇腹に打ち付けられた
それを見た最後の一人が怯んだ隙に、自身番の男は自らを軸にして回転、その勢いを活かし<さすまた>を打ち出すようにして腹を捉えた。
「ご…っ お……っ!」
正面から腹を<さすまた>で打ち据えられた
この間、僅か瞬き数回分。
そこに、
「ヒアカ! すまん、遅れた!!」
声を上げながらまた何人かの人間が現れる。
やっぱりエンジ色の法被を着て、<さすまた>を手にした者達だった。
「って、もう終わったのか。さすがだな」
さらに、一人が前に歩み出て、
「ヒアカ、怪我は……!?」
と問い掛けてきた。エンジ色の法被を着てるけど、<さすまた>を手にしてるけど、若い女だった。
女は心配してるようだ。
「おう、見ての通りなんともないぜ! クレイ!」
その二人のやり取りを見ているだけで、かなり深い関係だというのが分かった。
すると他の自身番の男達が、
「こいつらは俺達が番屋に引っ張っていくから、ヒアカとクレイはそこの人から話を聞いておいてくれ」
「おう、分かった」
<ヒアカ>と呼ばれた男は手を振り上げながら応え、<クレイ>と呼ばれた女と共に僕に向き直る。
面倒臭いことには関わりたくなかったから今度こそ<神隠し>でこの場を去ろうとした僕に、ヒアカとクレイは、揃って破顔一笑、
「来た早々、災難だったな」
「あなた、サコヤの人だよね? ルドイは初めて?」
人懐っこく話し掛けてきたのだった。
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