クラス分けと面倒な勇者
「お前ちょっと言い過ぎだったんじゃねえかフィーナ?」
「そうだね、でもナナシは僕の大事な親友だ。だからといって彼女を蔑ろにしていいわけではなかったかもしれない」
「あの子も入学初日からかわいそうになぁ、俺たちと一緒できっとうきうきしながら学園に来たのだろうに尊敬しているフィーナ様に初日から折檻なんてなあ」
「うっ……後で謝るよ……」
「フィーナが謝る事なんてないわ、貴方は間違った事なんてしてないもの」
「そうですよ、1番の親友を貶されては誰だって怒ります。なんと言っても1番の親友なのですから」
メアリーの1番の親友推しが本当に煩いな。
後でどついてやろうか。
それにしてもあのような輩がいるのはわかっていた事だがまさか初日からとは思わなかった。
彼女には同情するばかりである。
まぁ、ざまあみろと思っているのも本当ではあるが。
学園の入り口の所で教師らしき人物が立っている。
「新入生はクラス分けを行う為、中庭の方へ向かってください」
あぁ、クラス分けはここでやるのか。
入学書類になにも書いてなかったしな。
……フィーナの顔色が青くなっている。
クラス分けがあると思っていなかったのかこいつは。
孤独に勝る絶望はないと言わんばかりの表情である。
気分がいい。
「だ、大丈夫よフィーナ!私たちには絆があるもの!クラス分けなんかでこの絆が裂けるわけがないわよ!」
「そうですよフィーナ様!絆ですよ絆!」
「あ……ああ、うん、大丈夫……大丈夫だよ……」
それにしてもこの勇者、孤独に慣れていなさすぎる。
こいつメアリーがこっち側だと知ったらそれだけで死ぬんじゃないか?
「別にクラス違うくらいいいだろ、今世の別れってわけでもねえしよ」
「絆……絆……」
フィーナはぶつぶつと何か喋っていて気持ち悪い。
本当に乙女というか思考が病んでいる。
気持ちが悪い。
「先行くぞフィーナ」
「あっ、ちょっと待ってよナナシ!」
「ほんと仲いいわねあの2人」
「親しさが出ていて微笑ましいではないですか」
「あたしには親子に見えるわ」
「恋人にも見えませんか?」
「……冗談よね?」
「もちろんです」
後ろではなんとも平和な話をしているがメアリーは本当にそろそろいい加減にしろよ?
中庭に着くとなんともまあまたざわめいている。
クラス分けの看板があるらしいが全く見えない。
そんな中で1人の男が前に出て叫ぶ。
「どけ!僕はネザー・アルメリア!このアルメリア王国の第二王子だ!道を開けろ!」
へえアレ王子か。
ドラ息子って感じだな。
そういうと生徒達がまるでモーゼが割った海のように割れる。
「それでいい」
そういうとネザーは看板の前へ歩いて行く。
ちょうどいいな。
俺はラッキーと思いつつ看板の前へ行く。
「お、メアリーと俺はAか。フィーナとエルザはCだな」
「……おい」
「あ?」
「貴様は何をしている」
「クラス分けの看板見てんだよ」
「……見てわからないか?今僕が看板を見ているのが」
「お前こそ看板見てわからねえか?この看板は1人用じゃねえぜ?」
「……随分面白い男じゃないか。名を」
「ナナシ・バンディット、お前はネザー・アルメリアだったな?同じクラスだな、よろしく」
「くく……権威に屈しない。決してお前の下に就きはしないというその野心に満ちた目。貴様とは仲良くなれそうだ」
「そうかい?入学初日から仲良くなれそうな奴がいて安心したぜ」
「僕は先にクラスに行く。さらばだナナシ・バンディット」
「あぁ、後でなネザー・アルメリア」
周りの生徒達は青ざめていたり、どよめいているが知った事ではない。
「貴方、よくネザーにあんな気軽に話しかけられるわね……」
「さすがにドキドキしてました…」
エルザとメアリーも周りの生徒と一緒のようだ。
「……ナナシは僕じゃなくても誰とでも仲良くなれるんだね。まあ……いい事なんだろうけど……」
「別に友達ってわけでもねえだろあんなん、おうメアリー行こうぜ」
「はぁい」
フィーナは相変わらず面倒な恋人のようなポジションである。
フィーナよりはネザーの方が気が合いそうだな、と思いつつ俺もクラスへ向かうのだった。
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