神と転生
「ふむ、其方が選ばれた者であるな」
黒い視界の中で声だけが頭に響く。
選ばれた者?何の話だ?
「あぁ、答える必要はない。其方の言いたい事はわかる」
声は出していないが目の前の奴が言葉を並べる
誰だこいつは?何処だここは?
「まあ今の其方には肉体が無いから声は出ないのだがな。私は神でここは……そうだな……次の世界の入り口である」
肉体がない?神?次の世界の入り口?
言葉としては意味を理解できても思考がそれに追いつかない。
「まあ単純な話である、其方は前に生きていた世界で死んだ。だから其方は次に生きる世界に行くということである」
なるほど、と納得できる状況では無いのだが夢であればそれでいいし、現実であればそれでいい。
「まあ君に特別な物をやる事はないのだがな。無敵の肉体、際限なき知識、尽きぬ魔力、其方には必要ないものであろう?」
嘲笑するように神とかいう奴は言う。
そうか、俺は本当に死んだのか。
「その通りである、向こうの世界で学ぶといい。ここで君に知識を与えるつもりはないからな」
俺は誰かの子として生まれるのか?
「いや?君は赤子のまま適当な場所に放り出すつもりだが?」
こいつは何を言っているのだろう?
絶対に知能や物心がつくまでに死ぬ自信がある。
「ふむ、それは確かに。では君の知能をそのままにして送ることにしよう。それなら生き延びられよう」
こいつの中で赤子は知能があれば立って1人で歩くのだろうか?
本当に神なのかが疑わしくなってくる。
「もういいな?では転生の時である。次の世界を楽しむといい。」
こちらの返事を聞くこともなく再び意識が薄れていく。
最後に聞いた声だけが何故か鮮明に聞こえた気がする。
「願わくば次の世界ではその心が満たされん事を」
その言葉と共に黒かった視界を白い光が飲み込むように包み込んだ。
堅い身体も与えられず、広い知識も与えられず、強い魔力も与えられずに彼は次の世界へ送られる。
だが神とやらが彼に与えてしまった知能。
悪としての彼はまだ消える事はない。
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