悪の勇者の異世界征服

東乃西瓜

一章 神に選ばれた悪

出会い 世界 別れ

「………来たか」



薄暗い世界が続く場所で俺は呟いた。

ここは俺がただ奪い続けた世界。

ここが俺がただ殺し続けた世界。



「やっとこれで、終わるのか」



俺の眼前に立っている男。

俺を終わらせるであろう男がそこにいた。



「あぁ、構わねえよ」



男は一言も話していないが俺は分かっている。

その男の手段も、その男の目的も。




------ドスッ



男の持つ鋭い刃が俺の胸を貫く。

これがこの男の手段。

男は刃を俺から引き抜くと刃を濡らす俺の血を払おうと勢いよく刃を振った。



「………あぁ、お前だ」



俺は男にそう伝え、冷たい地に背から身体を預け、目を閉じた。



これがこの男の目的。



そして俺の望みだった。



冷たい地面が少しずつ暖かくなっていく。



いや、俺の身体が冷たくなっているのか。




「………終わり、か。まあ、悪くはなかったな」



俺は小さな声で誰に伝えるでもなく呟いた。



最後にもう一度この世界の空を見よう。



空には星一つなく、雲一つなく、ただ暗かった。




「………いい……空だ」



俺の命は、その言葉を最期に終わりを迎えた。

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