危険な依頼



ある日、滄劉から群に依頼が届く。

それも、書類が郵送されたとかじゃない。

滄劉の防衛軍、その重鎮から直接渡しに来たのだ。


「・・・お待たせしました。」

「いえ、こちらこそ急な申し出でした。」


会議室のような場所に、ホルストは入室する。

普段のような軽く明るいような雰囲気はない。

服装も群の正装。

そして滄劉の防衛軍の重鎮が座る席、向かいの席にホルストは腰掛けた。


「さて、早速本題から。

・・・アグニオスという竜族、ご存知でしょう。」

「はい。俺たち群にいる実力者たちも対峙しましたが、倒せなかったとも聞いています。」

「我々の、防衛軍が誇る隊員に被害が出ています。

・・・ここまで言えば、おわかりでしょう。」



言わずとも伝わる、要件は討伐依頼。

相手は群の強豪を下し、或いは仕留めきれなかった災厄。

恐らく、何処も手を焼くことだろう。

ただでさえ内戦があったり、或いはそもそもまともに治安維持しない国があったり、或いは防衛に力を注ぐ国もある。

となれば必然、比較的フリーである群に依頼が届くのものである。


「無論、此方からの報酬は過去最大になるかもしれん。それに加え、私どもからそちらに手助けもする。」


報酬については異論はない。

金というのは力であり、誠意でもある。

だが、手助けとは何か。

ホルストは頭に疑問符を浮かべていた。


「これだ。」


机に、ある物が置かれた。

白い、弓のような・・・。


「宝具・ヴィエーチル。

防衛軍に所属する、マシロ・アストレア少尉からの希望だ。


"どうか、勇気ある弓使いがいましたら、これを貸してあげて欲しい。

守り人である私では直接手助けは出来ませんが、この一矢がきっと突破口を開いてくれること、そしてなにより貴方たちを信じてします。"


とのことだ。」



絶句した。

まさか宝具をそのまま貸す人がいるとは思わなかった。

そして、"勇気ある弓使い"。

ホルストには心当たりがあった。

であれば、その申し出を断る理由はない。


「請け負います。その信頼に応えられるメンツを揃えて挑みます。」


かくして、アグニオス討伐依頼は群に張り出された。

そして直ぐに、精鋭は集まることになる。

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