新島鉄道

KO=李

666の息子

 「一三が死んだと聞いたのは前線部隊の任を解かれて内地へ帰った翌日のだった。あの日の衝撃は大きく、純血と王への憎しみは最高潮に達した。しかし、俺は自身の強さのせいで政府の監視下に置かれていた。だから、俺はこの国への復讐を次の世代に任せることにした」

父の遺言。17歳で越境部隊に選出され、28歳で帰還。47歳でこの世を去った。父は息子である俺、新島鉄雄に復讐を任せた。しかし、俺はこの国に対してそこまでの恨みはない。すまないが好きに俺は生きていく。

 純血と混血の違いは何なのだろうか。肌の色や髪の色、骨格、話す言語。どれもほとんど変わらない。強いて言うなら混血は目の色が赤色で身体のどこかにロット番号のタトゥーが入っているくらいだ。それだけの違いで、行ける場所や入れる店、住める場所まで制限されてしまう。さらには混血には兵役が科されるとまで来ている。その差別は混血世代が減りつつある今、その子孫にも対象が移りつつある。

「おい!混血のボケが!純血のワシらに喧嘩売ってんのか!?」

高校で先輩に絡まれた。バイクの置き場所に文句があるらしい。別に横に止めただけなのに絡まれる筋合いはないんだがな。

「あ、すいません。先輩のとは知りませんでした」

「混血のボケぇ、お前謝ったからって許してもらえると思うなよ!名前は!?」

「新島です」

「ほぅ〜、あの"新島"ね〜。随分、1年の間じゃ幅効かせとるらしいの」

「純血も混血も痛いのは苦手みたいで、喧嘩しまくってたらいつのまにか効くようになりました」

「イキんなや〜〜」

うるせぇなぁこいつ。

 俺は父ほど身長は高く無いが、血の影響か筋肉質の身体を持っている。お陰で、普通の喧嘩じゃ負けた事はない。

 とりあえず左手で相手の目を覆い、右でぶん殴る。そのあと、動かなくなるまで蹴り続ければいい。悲鳴を上げているうちはまだ元気だ。この先輩は24秒もった。

「ぼくはですね、先輩。基本的に優しく生きたいんですよ。でも、沸点が低いのでなかなか叶わないんですよ。お願いですから次からは怒らせないでください」

とりあえず、バイクで一回くらい轢いておこうかとおもったけどやめておこう。怒られそうだ。

 バイクにまたがりこの場から去ろう。


 家に帰ると母が青ざめた顔で椅子に座っていた。学校から通報でもあったのだろうか。

「オカン、どしたん」

「おまえ、これ見てみなさい」

 机には一通の封筒が置いてあった。「召集令状」と印が押されている。そういや、先週辺りに混血の子供にも兵役を課する改正案みたいなのが通ったって聞いたな。こういう手合いのは政府の仕事が早いな。

「召集令状だね」

「お父さんも行ったの知ってるやろ?」

「でも来てしまったもんは仕方ない」

「そうやけども……」

「親父は越境部隊や。これはただの兵役や」

「どちらでもええんよ、そんなのは。私はお前が心配なんよ」

 かける言葉が見当たらない。俺はそこまで怖くはないのに、周りの人が自分よりもオーバーな反応をとると困惑する。ただ、そこに立っておくしか出来ない。

「召集日はいつ?」

「2ヶ月後の10月10日」

「分かった」

 そう言うと俺は自室に入った。

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