ダンバのお兄さんはお優しい
俺たちがミルクを飲んで休んでいると、近くにクエストを終えて酒場にきた冒険者が飲みにやってきた。
その冒険者は俺を見ると傍までやってくる。
「おい坊主、新人か?」
「ええ、まぁ」
俺はそう答えるが、内心またかと思っていた。
冒険者ってのはどんだけ絡みたがるんだ?
また手を出してくるようなら徹底的にやってやると思いながらその冒険者を見る。
「そっかそっか! 坊主にゃ守らなきゃなんねぇ奴が二人も居るんだからよ! 何かあったら俺たちを頼れよ! このB級冒険者グレオをな!」
グレオと名乗った男はそういうと、仲間たちの元へと帰っていた。
「あぁいう人も居るんですね」
美由の意見に俺も賛成だ。
正直またかよと思ったが今回の人はただのいい人だったみたいだ。
「お待たせしました。あら? どうしたの?」
男が去って行ってからすぐ、受付のお姉さんがやってきた。
「あの男の人が困ったことがあったら頼れよって言ってきたんです」
俺はグレオを指差してそう答える。
「あーグレオさんか。あの人ここでは初心者に優しくて、育成屋なんて呼ばれてるのよ」
育成屋。つまり新人が無理したりしないよう、教育なんかしてくれるのだろう。
どれだけあの人が優しい人なのかがその言葉でわかる。
少し疑ったのはしょうがない。
「まぁたしかに、ああ言った人は珍しいわよね」
やっぱり珍しいのか。
「冒険者ってのは自己中心的な人も多いからね。よし、じゃあ受付まできてくれる?」
そう言って俺たちを受付に促す。
「これが今回の報酬よ。D級魔石213個で、106,500リムね。カードに振り込む?」
「二人に半分ずつでお願いします」
「わかったわ」
彼女は水晶を操作して、その後俺たちにそれぞれカードを返却する。
「おめでとう、ゾンビの討伐クエストがあったから、クエストとしても受理しておいたわ、それで一気にD 級昇進よ!これで一人前ね」
お姉さんはそう言いながら拍手してくる。
冒険者はD級で一人前と言われるそうだ。
「これで処理は終わりよ」
「あっ。おすすめの宿教えてもらっても良いですか?」
俺は思い出したかのように尋ねる。
「お勧めね。えーとね。蝶の里という宿屋がここから近くて、安いし、ご飯は美味しいからおすすめよ」
そう言ってお姉さんは簡単な地図を書いてくれた。
「ありがとうございます」
俺たちは、地図を受け取り、冒険者ギルドを後にしようとした。
すると再び声がかかる。
振り返るとグレオだった
「坊主もう帰っちまうのか? 一緒に飲もうぜ。」
どうやら飲みのお誘いのようだ。だがあんまりこの子たちと離れるのは得策ではないと思うんだよな。特に来たばかりだしな。
「せっかくなんですけど「行ってもいいですよ?」え?」
断ろうとしたのだが、被せるようにして美由が行く事を勧めてくる。
俺と一緒にいるの嫌なのか?
「宿は私たちで取っておくんで楽しんできてください。私は未成年ですけど、天羅さんは飲みたかったんじゃないですか?」
たしかにこっちに来てからアルコールなど入れてない。ここにくるまではがっつり飲んでたんだけどな。
「リリアちゃんも、大丈夫だよね」
「はい。美由様のことは私にお任せください。部屋の方も宿の者にいつでも入れるよう伝えておきますので」
二人とも俺に気を使ってくれているのかな?単純に嬉しいな。
「ならお言葉に甘えて、飲んでいこっかな」
異世界の酒にも興味あるしな。
「では先に行ってますね。ゆっくりしていってください」
「よかったな坊主!」
グレオは俺の肩に手をやり、がはははと笑っている。
それを見てから美由たちがギルドを出て行く。
俺はそれを見送ってからグレオに連れられて、グレオたちのグループの席に向かう。
「グレオさん。俺一応20超えてますから坊主じゃないですよ」
俺は成人である事を伝える。
「がははは、俺からしたら10も20も坊主よ! まぁのめや」
豪快に笑いながら、俺に酒の入ったジョッキを渡してくる。
「頂きます」
口をつけて喉へ一気に流し込んだ。
「うまっ!」
アルコールが体を駆け回るのが分かる。
地球で言えばビールか。
なぜかキンキンに冷えていてめちゃくちゃうまい。
「だろ? ここのギルドは特注のジョッキを使っててな。これ魔道具なんだぜ?」
魔道具。魔法を組み込んだ道具で、様々な事を魔法なしに使うことができるって奴だっけ?
「そうなんですね。通りでキンキンなハズですよ」
酒が進み、あっという間にジョッキの中は空になった。
「いい飲みっぷりだな! こんだけいい飲みっぷりしてっと、坊主なんて呼べねぇな。テンラって呼ばれてたっけ?」
「ええ、そうです天羅です。」
「そうかそうか、俺はグレオ。でこいつらが俺のパーティーメンバーたちだ。ほら挨拶しろ」
そう言って周りの人たちに挨拶するように指示を出す。この人がリーダーなんだろうな。
「バナイダだ。前衛をしている。よろしくな」
こっちも頼りになりそうな男の人だ。
「ダッパっす。斥候を主にしてるっすね。道が知りたくなったらなんでも聞くっすよ?」
次はいかにも盗賊ってスキルなんかを持ってそうな顔立ちの男の人だな。でもなんだかんだでここいった人が良い人なんだよな。
「ザンドレと言います。魔法使いですね」
今度は賢そうな人だ。魔法使いであるからか?なんだかこの人がこのパーティーの頭脳みたいだな。
そんな第一印象を受ける。
「よし、自己紹介も済んだし、今日は飲むぞ!」
「「「おー」」」
「おー」
全員に続いて俺も返事をして、その晩酒場が閉まるまで、俺たちは飲み明かした。
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