第5話 ヒロインは…別に居る?
私と
それでも、私の家の
やはり…何とか、私達だけで探さねばならないでしょう。まあ、実際に探すのは、私達お嬢様2人でなく、我が家と立木家の使用人、若しくは関係者達なのですが。
しかしながら、彼らは優秀ですからね。私達の期待に添いたいと頑張ってくださっています。時間が掛かっても探し出せると、私も麻衣沙も信じておりますのよ。
それよりも…今は目の前の出来事の方が、私達には気に掛かることでしょうか?
何故か、またあのヒロインが…私達の大学に、来ておられるのですもの。
私と麻衣沙が大学の中庭の方へ向かっておりましたら、彼女が…ヒロインがおられましたのよ。まるで誰かを探しておられるかの如く…。私達は見つかると不味いと思いまして、慌てて校舎と校舎の間にある隙間に、身を顰めたのですわ。
すると、彼女は…はあ~と息を吐かれまして、疲れたように座り込んで独り言を言われたのです。その言葉に…私達は、やはり…と思ってしまいましたわ。
「…はあ~。この大学の
…などと、ぶつぶつ呟いておられます。…ああ。やはり、そうなりますわよねえ。
2人も攻略対象が居ない上、隠しキャラも見つけられないならば、残りは3人しかおりませんものね…。そして彼女は、教授には興味無さそうですもの。まあ、普通に考えても、生徒でもない部外者に教授が個人授業するとか、全く有り得ないですからね。彼女がそれに気が付いたかどうかは、分かり兼ねますけれども、攻略しないのは賢い選択と言えますでしょうね?
私と麻衣沙が立ち去る前に、彼女は立ち去って行きました。私達は授業の移動途中でしたから、彼女が立ち去ってくれて助かりましたけれど。先日、彼女が伯父さまに連れ去られるようにして去ってから、樹さんが過剰に反応されるようになりまして…。もう、毎日のように、お迎えに来られるようになったのですわ。
朝から授業がある時は、私の自宅まで迎えに来られますし、途中から授業がある場合は、大学まで送迎する場所まで、迎えに来られるのですのよ。私が車に乗るのを見届けに、来られたりされるのですわ。
私も麻衣沙もそれなりの家の令嬢ですから、当然の如く、我が家の専用車で送迎してもらっておりますわ。私達には専任の運転手がおりますのよ。何処へ出掛ける時にも必ず、その専任の運転手が私の送迎を致しますのよ。それは、樹さんも岬さんも同様のことでして、自宅まで迎えに来られても、私が樹さん専任の車に乗り込むことになるだけですのよ。あまり意味がないのですが…。
一般生徒達のように電車に乗って、電車から降りた後は大学まで歩いて、ということでしたら、心配されるのも当然なのかなあ、と思いますのよ。ですが、私の場合は専任の車での移動ですので、狙われるとかでしたら…大学内かと思うのですが。
ですから、樹さんには、大学内のセキュリティをしっかりとさせていただくよう、申し上げましたのよ。この大学は元々、樹さんのお家の関係者の経営ですからね。
樹さんに申し上げた方が早いのですわ。
「…ルル。本当に…大丈夫?…今のところ…あの女性は、君に接触して来なかったかな?」
「ええ、樹さん。今のところは大丈夫ですわ。確かにあの女性は…貴方に気があるご様子でしたから、私には悪意を持っているようでしたわね。その…樹さんは、彼女のことを…どう思っていらっしゃるの?」
「俺が…彼女のことを?…どう思うって言われても…彼女に会ったのは多分2回目だったよ。然も1回目は、全くという程覚えていないんだよ。多分、あの時だなあ…というのはあるけどね…。でも俺は…お礼を言われることは、絶対していないという自覚がある。きっと彼女は、俺が親切にしたと勘違いしている、と言いたいところだけど、彼女は…都合の良いように、考えているだけだと思うよ。」
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「そうなのですね?…では樹さんは、彼女に…好意はないと…?」
「勿論だよ!…俺があんな軽薄な女性に、好意を持つと思っている?…だったら俺は、絶対にないと誓うよ。俺は、ああゆう媚びる女性は嫌いだよ。」
「………。それならば…彼女の外見に関しては、どう思われましたの?」
「どうって…まあ、うん…。彼女が似合っていると思うなら、いいんじゃないのかな?…俺は…外見で判断するつもりはないけど、流石にあれは……ないかな?」
…なるほど。やはり、男性から見ても、あれは…恋愛対象になる見込みがないのですね?…一体、あのヒロインは何を考えて、あのケバい恰好をされているのでしょうねえ?…多分、乙女ゲームのように化粧をせず、素顔のままの方がモテモテでしたでしょうに。何故に…あのような濃い化粧と、派手派手な服装をされているのでしょうね?…乙女ゲームの内容を覚えておられるようですのに、残念な人と言った感じですわね…。ですが、結果的にはそういうお人だったからこそ、樹さんも岬さんも冷静でおられたのかもしれません。あのゲームそのもののヒロインでしたら、樹さんも岬さんも即…好意を、持たれたかもしれませんもの。
別に…私と麻衣沙が、悪役令嬢の破滅ルートを壊せるのならば、樹さんと岬さんがゲームそのもののヒロインに、惹かれても構わないのですよね。要は、私達婚約者に罰を与えないで、婚約破棄だけしてくださるならば、ヒロインとどういう関係になられても良いのです。ただ、よく物語にある公開処刑のような婚約破棄は、止めていただきたいのですわね。
現世の私の両親も麻衣沙のご両親も、私達子供を大切にしてくださっております。ですから、出来るだけ悲しませたくありませんし、ご迷惑をお掛けしたくないのですわ。それに、これだけ溺愛してくださる両親ならば、斎野宮家と篠里家を敵に回してでも、戦ってくださるかもしれませんもの。そうならないように、私も麻衣沙も慎重に動かなければなりませんわ。
「ねえ、ルル。君は何か勘違いしているみたいだけど、俺の婚約者は…君だからね?…俺の婚約者になれるのは、君だけなんだからね?」
「ええ、よく理解しておりますわよ。貴方の婚約者になれるのは、(今のところ)私だけなのですよね?」
私は分かっておりますよ。だって…この婚約は、樹さんの意思ではありませんものね。私の両親と樹さんのご両親が勝手に決められた、婚約なのですもの。そんなに強い口調で念を押されなくとも、私はしっかりと貴方のお気持ちを理解しておりましてよ。
「う〜ん…。何となく、君は…まだよく分かっていない気が、するんだよね?…まあ…今はそれでも良いよ。」
もう、樹さんって、結構疑い深いんですのね…。私だってこの婚約は、私自身が望んだものではありませんもの。貴方のお気持ちは、よく理解出来ますのよ。
私は何時でも、樹さんの味方ですからね。貴方のお相手がヒロイン若しくは他の女性でも、私は…婚約破棄を喜んでOK致しますからね!
私が心の中で、樹さんに切実に訴えております。(※相手には聞こえてません。)分かっておりますよという意味を込めて、私は満面の笑顔で返しましたのに、樹さんは…何か仰りたいことがある、というお顔をされていらっしゃいましたのよ。
もう…何なのでしょうね?…何故、私の純粋な気持ちは、彼に伝わらないのでしょうかねえ。お祈りが足りない…とか?
しかし、意外でしたわ。普段からお優しい樹さんが、まだ正規ヒロインだと分かっていなかった時とは言えど、女性に対して冷たい態度を取られたのですもの。
その上、あの姿のヒロインはお好きでない、という本心も伺いましたし。
確かにあの姿のヒロインは、残念過ぎておりますよねえ…。樹さんもやはり本心では、純真無垢なヒロインをお求めなのですね。そう考えますと、彼女では…ヒロイン失格なのかしら?
…う〜ん。本当に彼女は、正規ヒロインなの?…もしかしたら、正規ヒロインは…他にいらっしゃるのではないの?…そうか!!…そうなんですわ!…他にも、正規ヒロインがいらっしゃるのね?…よく物語には、第二弾とか…ありますものね?
この乙女ゲームにも、きっと存在したのに違いありませんわ。私が覚えていないだけで。若しくは…私が、早世してしまったのかもしれません。その辺ははっきりと思い出せないので、確定は出来ません。ですが、それでも第二弾が作られていて、新しいヒロインや攻略対象も増えている、という可能性は無くは無いのですわ…。
可能性がある限り、私はこの説(※自分の案です)を信じますわ。
本物の正規ヒロインさん、ぜひ、ご登場をお待ちしております!
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