第九十九時限目
「霧島君って本当に女の子みたいな顔してるわねぇ」
「そうですかぁ~?でもよく言われます」
「化粧したら結芽なんかよりも綺麗よ!」
「じゃぁ、是非今度化粧して下さい(笑)」
(どんな会話だよ…しかも『今度』っていつだよ…)
霧島君が家の中に入ってからもう40分は経過している。
「霧島君のお家って、この辺じゃ有名よ~?」
「え、何でですか!?」
「無駄に広いって!凄いわねぇ」
(無駄とかって失礼だし…これ以上喋ると絶対ボロ出るのに)
「そう言えば、結芽と同じクラスなのよね?」
「はい♪」
(ん…?何か嫌な予感…)
自分の母親の性格位、勿論あたしだって知り尽くしているつもり
(余計な事言うなよぉ…?)
「じゃぁ、『松川君』って子は同じクラスかしら?」
「松…川ですか?」
そんなに都合良く『松川』なんて名字がいる訳ない
それに、もしクラスにいたとしても勘違いされたら相手だっていい迷惑だ。
「松川…」
霧島君がチラリとあたしを見る。
「ち、違うクラスだよね!?霧島君は全然知らない人だよっ」
慌てるあたしを、お母さんが不思議そうに見た。
「そうなの?何かね、結芽の想い人みたいで…」
「ちょっと…っ!!お母さんもう部屋行きなよっ!寝言いいすぎ!」
「お母さん起きてるわよ?」
「何だっていいからもう寝て!!お願いっ!」
相手が霧島君なだけに、これ以上会話はさせたくない。
「霧島君も遅いからもう帰った方がいいよ」
お母さんに飲みかけのカップを持たせ無理矢理リビングから追い出す。
「霧島君、またいらっしゃいね」
「お母さんっ!!」
霧島君にも玄関で靴を履いてもらい、あたしは急いでドアを開けた。
「じゃっ、モコは責任を持って受け取りますっ!気を付けて!」
「うん♪あ、その前に…っ」
霧島君があたしの後ろに向かって小さく叫んだ。
「竹内のお母さんっ」
「どうしたの?」
「俺、今竹内に片思い中なんで♪」
固まるあたし
「あら♪そうなの?霧島君も趣味悪いわぁ(笑)」
「アハハ(笑)じゃぁ、失礼しますっ!」
(何だ今のは…)
ニコニコとあたしに笑顔を向け、霧島君は静かにドアを閉めた。
「…芽っ!結芽っ!」
後ろから、お母さんに肩を叩かれる。
「あ、何っ!?」
「霧島君!送りなさいよっ」
「今送ったじゃん」
「外で見送ってあげなさいって!モコ見ててあげるから」
「え~…」
「早く!」
「分かりました」
あたしは急いでサンダルを履き、霧島君の元へと走った。
「霧島君っ」
「竹内。わざわざいいのにぃ~」
「見送るだけだから」
霧島君がエンジンを掛け、ヘルメットを被る。
「びっくりした!?」
「何が?」
「愛の告白♪」
「告白って…あたしにじゃないでしょ」
「じゃぁ、宣戦布告!」
「何それ」
霧島君から視線を反らし、あたしは向かい側にあるガソリンスタンドへと目を向けた。
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