第九十七時限目
霧島君の長所は、どんな時でも笑顔でプラス思考な所
でも、そんな長所でも時と場合によっては人に不快感を与えてしまう時もある
それを今日拓との言い合いの時に思った。
確かに笑って話せば言い合いもエスカレートしないのかもしれない
でも、あれはどう見ても拓をバカにして見下してる様にしか思えなかった。
そして1番呆れたのは
『拓のお父さん』の事…
何処で仕入れた情報かは知らないがあんな道端で、しかも弱味を握ってるかの様な卑怯な言い方…
何も言わなかったあたしも最低だけど、あの時は本当に拓が可哀想に思えた。
「ねぇ、竹内の部屋って2階の左側!?」
「そうだけど…何で?」
「下っ!下見て!」
「下…?え、もしかしてっ!!」
あたしの予感は見事的中
部屋の出窓から外を覗くと、そこにはバイクに股がったままの霧島君の姿があった。
「何でいるのっ!?」
「竹内のバック持ってきたよ~!…ってか下りといでよ!」
「あ、うんっ、今行くからっ!」
電話を切り、あたしは急いで1階へと下り霧島君の元へと走った。
「やぁ♪」
「やぁじゃなくてさ…わざわざバック届けてくれたの?」
「だって財布入ってんだもん、危ないっしょ?」
「大金入って無いから盗まれたりは無いと思うけど…」
「まぁまぁとりあえず、はいっ!」
「ありがと……」
霧島君の手からバックを受け取ろうとした時、
何処からか変な声が聞こえた。
(…何?今の…)
「どうしたの?」
「今何か聞こえなかった?」
「何かって何?」
「何だろ…気のせいかな…」
耳を澄ましてみる
すると、またさっき聞こえたのと同じ『声』が聞こえてきた。
「ホラっ、また聞こえたっ!」
「え!?どこどこ?」
霧島君はいつもの笑顔であたしの反応を見ている。
「ヤダ…怖い…」
「竹内っ…後ろ…っ」
「ヤダヤダ!見ないっ!」
あたしが目を瞑り、耳を塞いだ瞬間…
フワッ……
あたしのほっぺたに生温かい感触が当たった。
「うわっ、な、何っ!?」
相変わらず臆病なあたしは目を開けず、体を伏せた。
「犯人は、こ・れ・♪」
「へ!?」
押さえている手から漏れ、かすかに聞こえてきた霧島君の声に反応し、あたしは少しだけ目を開けた。
「……あ――っ!!」
「ビックリした?(笑)ごめんね♪」
『声』の犯人
それは、霧島君が着ていたパーカーの中からひょこっと姿を現した。
「猫っ!?どうしたのっ?」
「えへっ、持って来ちゃった♪」
「うわぁ~♪ホラ、おいでっ」
苦しくない様、優しく霧島君から仔猫を受け取る。
「親がさ、もうあげても大丈夫だって」
「本当!?可愛いっ、ありがとう!」
「沢山愛情あげてね!」
「勿論っ」
小さな小さな仔猫
そんな新しい命が我が家にやっとやって来た。
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