第四十七時限目
「言ったら、納得する?」
「言ったらね」
「分かった…」
ここからは、本当に勢い。
それと少しだけ、あたしのくだらないプライドの為と
何故かここまでさせる敦子先輩への怒り。
かなりの興奮状態であたしは駅の中で待つ拓の元へ向かった。
駅の中に入り、第1発目に視界に入ったのは改札の前で携帯をいじっている拓の姿。
あたしは重くなりつつある足に力を入れ、拓の方に近づいた。
「お待たせ」
拓が、慌てて携帯を閉じる。
「お、おぉ。話終わったの?」
あたしとその後ろにいる敦子先輩を見て、少し苦笑いしながら拓が言った。
あたしは電車の時刻表に目を配る。
(あと3分か…)
「今日、寒いっすね…」
拓がいつもと様子が違う先輩に話し掛けた。
「マフラーしてないからじゃない?」
「へっ?あ、あぁ…」
あたしはハッとしてマフラーを首から取る。
「これ返すっ!」
「え、いいよ別に…俺寒くねぇーし」
「嘘付けっ!ホラっ、ごめんね無理矢理取って!」
「は?」
「いや何かさ、1人でぬくぬくしてる拓見てたら頭に来てさ…ってかこのマフラー臭いし返すっ!」
あたしは強引に拓の背後に回り、マフラーを首に巻き付けた。
(あともう少し…)
「あっちゃん地元ここじゃないよねっ?友達の家に来たの!?」
あたしの苦し紛れな会話。
「違うよ。拓に会いに来ただけ」
「俺に?」
「うん、そう。でも必要無かったみたいだしね」
あたしを追い詰める敦子先輩の言葉。
今日の先輩は、今だかつて見た事がない位冷酷で怖い。
「あっちゃん優しいね~あたしとは大違いっ!ねっ、拓!!」
「あ、うん…かもな」
その時、あたしが乗る電車のアナウンスが入った。
「あ、電車来るっ!じゃあたし帰ります!」
ヘラヘラしたまま、あたしはブレザーから切符を取り出す。
「敦子先輩は?こいつと同じ電車ですよね?」
「あたしは拓と少し話してから帰る」
「あ、でも俺こいつを…」
言いかけた拓の言葉を、あたしが遮る。
「ですよね?わざわざ来たんだもん、拓幸せじゃん」
「は?何言ってんの?…先輩、俺こいつを家まで送るんで…」
「え?」
「何言ってんの?いいって!駅までお母さん迎えに来てくれるし!」
あたしと拓の会話に敦子先輩の顔が歪む。
それは、きっと怒りからではなく悲しみからくるもの。
すると、1番ホームに電車が到着した。
「あたし本当に1人で帰るっ!」
そう言い、改札にいる駅員に切符を渡そうとした時…
「お前、ちょっと残れ」
拓が、あたしの切符を無理矢理取り上げた。
「ちょっとっ!!電車行っちゃうじゃん!あのさ、別れ際に言おうと思ってたんだけど拓ウザすぎっ!迷惑なの分かんない?」
「…分かんねぇ」
あたしの目に、自然と涙が溢れる。
「今まで黙ってたけど、拓みたいなタイプあたしかなり苦手っ!一緒にいてもストレスしか溜んない!」
拓の顔が見れない。
あたしは電車から降りて来た人達の視線を浴びながら、地面に引き寄せられる涙を必死に堪えた。
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