第二十三時限目
去年とゆう日々がリセットされ、また新たな1年が始まる日、元旦。
あたしは朝早く部活の顧問による怒りの電話で起こされ、毎年恒例らしい『元旦稽古』に来ていた。
「竹内!もっとちゃんと踏み込めっ!」
「はいっ!」
「竹内!竹刀が下がってるっ!隙だらけだぞっ」
「は、はいっ」
3分とゆう時間内で、どうにかして先生から1本を取る。
しかし、取りに行く以前に息切れ状態で全身隙だらけのあたしはボコボコにやられてしまっていた。
「結芽っ!ファイト!」
「結芽っ!1本だよっ!」
(無理だからっ…この先生袴の下ノーパンなんだよぉ…くっつかないでぇ~)
元旦稽古のほとんどがあたしの稽古だけで終わり、かなり満足した様子の先生はさっさと着替えて帰って行った。
着替える気力も無く、場内で大の字になり寝転がるあたしに、綾香先輩や他の部員達が駆け寄ってくれた。
「結芽お疲れっ」
「あっちゃん…」
「かなり標的の的だったじゃん(笑)」
敦子先輩があたしにポカリを渡し、お面や竹刀を片付け始める。
「新年一発目からこんな仕打ちあり得ない…あのポークビッツ野郎っ!」
「何ポークビッツって?」
「先生のあだ名っ、この前先生が袴に着替えてる時チラッとあれが見えたんだよね」
「マジ!?ポークビッツとかって…結芽超ウケるっ(笑)」
しょうもない話しで盛り上がり、あたしの体力が少し回復した所でやっと制服に着替え、道場を後にした。
交通手段は、あたし以外みんな電車通学。
今日はみんなで一緒に駅まで帰ろうとゆう事で、あたしも自転車を引きながら便乗させてもらう事にした。
勿論帰り道は拓も一緒。
あの日のケンカ以来、拓とあたしはあまり顔を合わせる事は無かった。
駅に着き、解散した後それぞれが改札を抜け、帰る方向のホームへと別れるのをあたしは見送った。
「さて…帰ったらお年玉でも貰うかっ!」
捻挫をしていた右足もすっかり良くなり、いつもの調子でペダルを踏み込もうとした時…
「おいっ!」
「ん…?」
拓が改札から戻ってきた。
あたしは自転車から降り、走ってくる拓を待つ。
「ちょっとどっか行かね?」
「やだ」
「あっ、お前俺と喋っちゃったじゃん」
「……」
「鼻水垂れてるぞ」
「垂れてないっ!」
「あ、また喋った」
拓のペースに流されて笑ってしまったあたしは、今までの張り詰めていた空気が一気に壊れた。
「機嫌直った?」
「直った…ってか、1人で怒ってんのバカみたいじゃん(笑)」
「はいっ!今からまたケンカ友達に仲直りなっ」
「はいはい(笑)」
拓の久しぶりの笑顔に、何故かあたしもつられて笑顔になる。
「なぁっ、初詣行かねぇ?」
「あ、行きたい!じゃぁ家の近くの神社行かない?」
「いいねっ!行こうぜっ」
拓があたしの自転車に乗り、その後ろにあたしが乗る。
真冬の寒い中を拓は猛スピードでこぎ、2人で鼻を真っ赤にしていた。
それから神社に着いたあたし達は、とりあえず先にお参りをする事にした。
「凄い人だね~」
「お前いくら出す?」
「普通5円でしょ!?」
「俺5円無い…1円玉5枚ならあるけど」
「あたしもう1枚あるからあげるよっ」
15分並んで着いた境内の中で、もみくちゃにされながらもあたし達は戝銭箱に向かって5円玉を投げた。
「入ったかな?」
「さぁ…誰かの頭に落ちてんじゃねぇ?(笑)」
その場で拝み、窮屈な境内からあたしと拓は急いで脱出した。
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