第十時限目
部員が少ないせいもあるのだろう、先輩後輩関係は殆ど無く、常に和気あいあいとしていて楽しかった。
しかも、場内は剣道部と柔道部の2つだけ。
「よし、じゃちょっこら行ってくっか!」
拓は何を血迷ったのか、あたしから取り戻したエロ本を持ち、柔道部の部室へと歩き出した。
「え゛っ、ちょっと辞めてよっ!」
「いいじゃん(笑)お裾分けだよっ」
「ふざけんなっ!」
あたしは完全に拓の玩具。
(何で部活する前からこんなに体力使わなきゃなんないの~!?)
広い道場の中、あたしと拓が全力で走り回っていたそんな時…。
「拓~!何女苛めてんだよっ(笑)」
「おっ!桂太じゃん!」
(ん…?桂太…?)
拓を追い掛けていた足を止め、あたしは声がする方へ顔を向けると、そこには菜緒がゾッコン中である中山桂太の姿があった。
「桂太どうした?」
「お前に貸してたウォークマンを返して貰いに来たんだよ」
「あ、わりぃ。今返す」
拓と会話をしながら、桂太君がチラッとあたしを見た。
「ところで…何でマラソンしてんの?」
「あっ、見る!?俺の渾身の傑作!!」
「ちょっと拓辞めてーっ!!」
半泣き状態のあたしに綾香先輩と敦子先輩が気付き、拓の暴走を止めた。
(よ、良かった…あんなの見せたら比較されてしまう…)
走り回ってヘトヘトに疲れたあたしは、床に座り鞄の中に入っていたお茶を飲み干した。
「拓…好きな子いじめんの辞めろよ?」
桂太君が拓からウォークマンを受け取りながら言った。
「俺があれを?冗談だろ!!あれ、顔はいいけど性格悪いもん。腹黒すぎ」
(腹黒いだと…?お前なんかドス黒いだろーがっ!!)
言い返したい気持ちは山々だったが、面識のない男の子の前で大声を出すのに抵抗があったし、それにこんなあたしにも多少の恥じらいがある為、あたしはわざと聞こえないふりをして女子部室に入ろうとした。
「結芽ちゃ~ん!」
桂太君に呼び止められあたしは振り向く。
「あんまり拓苛めないでやってね~(笑)」
「それ…逆です逆」
「俺さ、音楽部なんだけどたまにライブとかやってんだ。良かったら友達誘って見にきて?じゃあね~」
桂太君が去り、それから間もなく他の部員や顧問が来て何事も無かったかの様にあたしと拓も練習に取り組んだ。
剣道は竹刀が外れて当たると痛いし臭い。
でも、竹刀を振り回す事でいいストレス発散にもなるし、顧問の頭を叩けるのが1番楽しかった。
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